2020年11月15日号
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artscapeレビュー

新潟三大学合同卒業設計展 Session!2010

2010年03月15日号

会期:2010/02/26~2010/02/28

新潟市美術館[新潟県]

ここ数年、日本の建築教育において、卒業設計に大きな注目が集まっている。それは全国の建築学科の学生が参加可能な「せんだいデザインリーグ卒業設計日本一決定戦」をひとつの頂点として、各地域において複数の大学が合同して企画する合同卒業設計展も増えてきたためだといえるだろう。「新潟三大学合同卒業設計展Session!2010」は、昨年に引き続いて二回目の若いイベントであり、このような動きのひとつだと言える。昨年もartscapeにて触れているので、前回との違いについて述べておきたい。今年は新潟大学、新潟工科大学、長岡造形大学に加えて、富山大学、金沢工業大学も参加し、新潟県だけではなく、日本海側の他県を巻き込んだイベントに発展した。二年見てはじめて分かることがある。日本一決定戦は誰もが意識しているが、その影響はそこまで単純に現われるわけではない。とはいえ、逆に去年の同じイベント(Session!2009)での作品の影響がかなり現われていたことも感じた。一方で、今回は五大学あり、大学ごとのカラーがかなり強く出ていた。モードを抑えた金沢工業大学、建築から距離をとる富山大学、地域性を意識した新潟大学、社会的テーマ設定にオリジナリティが強い新潟工科大学、圧倒的にプレゼンが美しい長岡造形大学。この五大学のよさが組み合わさるだけで、傑作が生まれる気もした。昨年のシンポジウムでは「地方都市」がテーマになっていた。本年、三日間さまざまな人たちとの会話で何度も現われ、自分も強く思ったのは、当たり前だけれども地方都市からの発信が単なるお国自慢になってはいけないということ。地方都市から東京だけを見るのではなく(地方/都心という関係を強調するのではなく)、隣の地方都市をよく見て、その違いを認識することで、はじめてその都市の特徴が浮かび上がってくる(地方/地方という関係性を強調する方向性)。それと同じような意味で、異なるタイプの五大学が集まっていたことはとても幸運だと感じた。互いの違いを認識して、よい部分を吸収することができる。そういった都市ごとの差異を踏まえた上での情報発信こそが、真に地方都市の可能性を高める方法ではないかと思った。なお、イベントの三日目では、新居千秋氏が基調講演をし、中谷正人氏がコーディネーターとなったシンポジウム「建築の2010年代を考える」が開かれた。2010年代におけるひとつの可能性は、地方/都心という軸に、地方/地方という多様な軸を重ねていくところにあるのではないかと思った。

http://sotsukeiten2010.atgj.net/

2010/02/28(日)(松田達)

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