artscapeレビュー
ENK DE KRAMERと東邦フランチェスカ
2010年03月15日号
会期:2010/02/08~2010/02/20
Oギャラリーeyes[大阪府]
長崎の原爆雲、被爆したマリア像などの写真を上から黒く塗りつぶす、激しいタッチのドローイング作品、別室には《Scope──私はフランチェスカを知らない》という血痕のついたおどろおどろしい作品も展示されていた。その名も東邦フランチェスカというアーティストグループ(?)なのだが、2009年に結成という以外はほとんど情報は非公開で、メンバーの性別も年齢も不明。ただなんとなく、まだ若い世代の作家なのではないかと思ったのは、現実感をともなわない既存の歴史観や、事実として伝えられる情報への違和感というもどかしい感覚を剥き出しに表現していたように思えたからだ。また、同じ空間に展示されていたベルギー在住の作家、エンク・デ・クラマーの作品の貫禄が印象的だったせいもある。夥しい数の線が確認できる銅版画は、近づいて見ていると、じわじわと重たさを増して染み込んでいくような色彩が印象的で、強い存在感がある。ただ、表現はまったく異なるが、どちらの作家の作品にも「見る」ということ自体を問うまっすぐな姿勢が表われていた。ともに異様な迫力を感じる作品だった。
2010/02/13(土)(酒井千穂)