artscapeレビュー
原克『美女と機械』
2010年03月15日号
発行所:河出書房新社
発行日:2010年1月30日
本書は、20世紀において、いかに女性の理想的な体型を求めてきたか、あるいは体型が求められてきたかを批判的に分析する、身体論である。原克は、雑誌の記事や広告の写真を素材に、健康=美の神話や身体のイメージを追いかけていく。その特徴は、ジェンダー論よりも科学の表象の問題として読み解く点である。なるほど、空気式バスト成形下着、ストレッチ機械、ベルト式振動機、拷問器具のようなストレッチ寝台、電動式乗馬マシン、体重計など、さまざまな器具が身体のまわりに登場した。通販でも人気の商品である。そして健康工場のようなモダンな病院。コルセットから解放された近代以降も、矯正やエクササイズを通じて、女性の身体は機械と接合した。理想の身体の神話によれば、痩せ型が批判され、スリーサイズがつくる曲線が美を生み、すぐれた男性と結婚でき、優秀な子供を産める。本書は、見慣れた身体の形成に機械がすでに介入していたことを教えてくれる。
2010/01/31(日)(五十嵐太郎)