artscapeレビュー
建築系フォーラム2010
2010年03月15日号
会期:2010/02/11
広島国際大学呉キャンパス1号館2階会議室[広島県]
広島国際大学の学生企画団体scale主催のシンポジウム。「地方建築家のロールモデルを考える」というテーマのもと、筆者を含む四人の30代建築家が、地方で建築家として活動するための四つの異なるロールモデルを提示して、議論を進めた。土井一秀は「アトリエ・モデル」、松岡聡は「往復モデル」、北川啓介は「プロフェッサー・モデル」、筆者は「メディア・モデル」という位置づけから、それぞれのモデルの可能性について語った。シンポジウムを通し、筆者は大きく二つのことを考えた。ひとつ目。おそらく地方都市で建築家として活動することには、東京に比べてさまざまなデメリットがあると考えられているかもしれない。しかし、単純にそう結論づけるのではなく、地方都市からの具体的な活動の可能性をさまざまに検証するべきだと、ポジティブな議論ができたことは、大きな成果だといえよう。二つ目。四者はそれぞれ海外経験を経ており、そのことと地方都市での活動の関連性も討議された。おそらく、日本における東京の存在感を相対化できるのが、海外という場所であり、特に欧米での滞在経験は、個々の都市の可能性に目を向けさせるのではないか。地方都市と海外都市というとやや距離があるように思われるかもしれないけれども、いわゆるグローバル・シティを介さない都市間ネットワークに注目が集まり始めたともいえよう。このシンポジウム自体が、地方都市からの一つの発信ともなっていた。
http://event.telescoweb.com/node/11033
2010/02/11(木)(松田達)