artscapeレビュー

2013年07月15日号のレビュー/プレビュー

坂本一成住宅めぐり

会期:2013/05/17~2013/06/30

八王子市夢美術館[東京都]

町田から八王子市立夢美術館へ。こちらは地元の建築家でもある「坂本一成住宅めぐり」展を開催していた。大きく引きのばした建築写真のタペスリーを床から立ちあげ(実際には天井から吊るが)、これまでのほぼ全作品を紹介する。この特徴的な展示手法は、シンプルだが、住宅の内観だと、特に効果があり、空間に引き込まれるような没入の感覚をもたらす。また新作であるProject AOの1/3模型は、かなり精度が高いことに関心した。

2013/06/13(木)(五十嵐太郎)

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中村好文 展 小屋においでよ!

会期:2013/04/17~2013/06/22

TOTOギャラリー・間[東京都]

ギャラリー間の中村好文「小屋においでよ!」展を見る。彼が影響を受けた古今東西の7つの小屋を紹介する第一セクション、中庭に実際につくられた小屋、そして上階は彼が手がけた小屋、あるいは小屋的なものの実践によって構成されている。いわゆる前衛性や目立つ派手な造形はないが、本人が好きなことがストレートに出ており、好感がもてる内容だった。テレビでも紹介されていたせいか、普段と違う多くの客層も訪れていた。

2013/06/13(木)(五十嵐太郎)

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亀谷彩 漆作品展「あめつちのくら」

会期:2013/06/05~2013/06/14

GALERIE CENTENNIAL[大阪府]

大地に見立てられた小さな羊の背中、フワフワした鳥の羽根を手のひらにおさめた手など、漆の質感や表情もそれぞれに異なる作品が並んでいた。作品のほとんどは小さなものだが、惑星の軌道や、天体、そして季節の移り変わりをイメージさせる展示空間がその軽やかで小さな作品世界にいっそう広がりを与えていて、雨の匂いや湿気、夜空、そよそよと吹く風など、眺めていると自然現象やその光景への連想を掻き立てていくから楽しい。最近は東京と関西で交互に発表をしていることが多いという亀谷。10月末から11月にかけては東京で個展が開催される予定だという。「逆さまの舟」をモチーフにした作品が発表される予定とのこと。そちらも気になる。


会場風景

2013/06/14(金)(酒井千穂)

森末由美子 展「道草ルート」

会期:2013/06/03~2013/06/22

ギャラリーほそかわ[大阪府]

これまで、本や食卓塩の瓶など、身近にあるさまざまなものに手を加えた作品を発表してきた森末由美子。近年は、刺繍を施した作品も展開している。本展では刺繍をはじめ、おもに糸を用いた新作11点が発表された。葉脈だけ残した葉っぱ(装飾用の既成品)に刺繍を施したこの6点のシリーズは、近づいて見ると色糸が何色も使われているのが確認できるのだが、葉脈に糸を絡ませながら刺繍されたそれらは絵画のような色彩の表情も美しく、離れたり近づいたり、見る位置で印象が異なるのも面白かった。ヘチマタワシに刺繍を施した作品にはさらに吃驚。聞いたところによると約20種類の色糸を用いてヘチマの繊維に縫い付けているのだそう。精緻で丁寧な仕事ぶりにも目を見張るが、白いヘチマタワシが、たくさんの糸の色によって“ヘチマらしい”青いヘチマのイメージになっていく、その過程を想像するのも楽しい。ほかに、ざるにオレンジやピンクの糸を繰り返し渡し縫い付けた作品や、金魚すくいの「金魚ポイ」という網を連ねた作品等も展示されていた。糸によってモノの隙間が少しずつ埋まり、面という要素ができていくなかで、ある時するりとイメージが変容する、その軽快な洒落っ気と繊細な作業のギャップにも惹かれる。今後の発表作品もまた楽しみになった。


展示作品《ざる》


展示作品《へちま》


展示風景

2013/06/14(金)(酒井千穂)

横田百合のオトンコレクション2013 ハリコ

会期:2013/05/24~2013/06/23

ギャラリー バンコ[大阪府]

私が横田百合さんのお父さんのコレクションを知ったのは、インスタグラムという画像共有のモバイル用カメラ・アプリケーションソフト。横田さんの写真は、たまたま見つけたのだが、日々更新掲載されていくその郷土玩具の写真と解説の数々が、じつに美術館か博物館並みに多彩で詳しく、そして楽しかったのですっかりファンになってしまった。今展は横田さんのお父さんが40年あまりにわたって集めた全国各地の郷土玩具コレクションのうち、張り子の玩具(の一部)を展示、紹介するというもの。会場には全国各地の張り子玩具およそ120点が壁面や棚の上にぎっしりと並んでいた。展示されたもののなかには、後継者がなかったり、もはや制作されていない(販売されていない)ものもあるとのことで、貴重な品々を手に取ってゆっくりと見せてもらえたこともとてもありがたかった。ちなみにお父様の蒐集の始まりは会津の「赤べこ張り子」との出会いだったそう。今展ではその“きっかけ”となった赤べこ張り子も展示、紹介されていた。一つひとつの地域色やあじわい、張り子の表面からうかがえる職人の手(技)、そして横田さんがお父さんのコレクション展を開催することに至るまでの流れなど、いろいろな人々の関係と歴史を感じた素晴らしい展覧会。次の「オトンコレクション」も開催が待ち遠しい。


展示風景

2013/06/14(金)(酒井千穂)

2013年07月15日号の
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