artscapeレビュー
2013年07月15日号のレビュー/プレビュー
中西佐知子 展
会期:2013/06/17~2013/06/22
番画廊[大阪府]
竹を編んだような編み目が画面に連続している絵画作品のシリーズが展示されていた。一見、線と色面で構成された画面なのだが近づいてよく見ると色彩もたいへん豊かで単調ではなく、色のレイヤーやリズミカルな抑揚のある画面になっている。至近距離で線や色面の変化をゆっくりと追っているうち、音楽を聴いているような心地良い感覚すら覚えて不思議な魅力を感じた展覧会。
2013/06/22(土)(酒井千穂)
秋山直子 針穴写真展「街を延う」
会期:2013/06/16~2013/06/23
吉田町画廊[神奈川県]
タイトルの「延う」は「はう」と読む。街をはうようにして撮ったピンホール写真ということだ。写された風景は見覚えのある場所が多い。伊勢佐木町とか黄金町とか吉田町とか、この近所のディープな横浜の街並だ。が、すこしピンボケのせいか、色彩がパステルカラーっぽいせいか、どことなくパリの街並を思わせないでもない。でもよく見るとやっぱし横浜。
2013/06/22(土)(村田真)
平川典俊「unión de…バラガン邸の完成」
会期:2013/06/22~2013/07/13
タカ・イシイギャラリー京都[京都府]
平川典俊の「unión de…バラガン邸の完成」は、これまでの彼の仕事とはやや異質な印象を与える作品だ。ニューヨーク在住の平川は1990年代以来、性的な抑圧からの解放をテーマとする挑発的な作品を発表し続けてきた。2012年に群馬県立近代美術館で開催された個展「木漏れ日の向こうに」では、性器や性行為を直接的に提示したり、ほのめかしたりする作品の何点かが、オープニング当日に主催者側によって撤去されるということもあったようだ。
ところが世界遺産にも制定されている、メキシコの建築家、ルイス・バラガンのメキシコシティの自邸を舞台に、中判カメラで撮影された本作は、端正なモノクローム・プリントによる古典的といっていいような風格を備えた作品だった。当地で公募したというダンサーたちは、バラガン邸の部屋の中や庭で、平川があらかじめ描いた絵コンテに従って、活人画を思わせるパフォーマンスを行なう。意表をついた視点の切り替えや、秘密の行為を覗き見るようなカメラ・アングルなどに、平川らしいたくらみは感じられるものの、いつもの猥雑さは影を潜めている。
むしろ今回の作品には、ある特定の空間において、そこにいる男女のパフォーマー(同時にそれを見る観客)の感情を増幅したり、重ね合わせたり、コントロールしたりする平川のあざといほどの「演出家」としての手際が、見事に発揮されているといえる。彼は自己の内面性よりは、彼以外の他者が社会環境からどのような影響を受け、どうふるまうのかに強い関心を抱くアーティストだ。写真や映像は、そんな平川の意図を実現するのに適したメディアなのだろう。なお本展で、タカ・イシイギャラリー京都は、隣接する小山登美夫ギャラリー京都とともに5年間の活動を終えて閉廊する。京都における現代美術の重要な拠点がなくなるのはとても残念だ。
写真:Noritoshi Hirakawa
Adriana and Alejandr, 2012
Silver gelatin print
Image size: 33 x 45 cm / 13 x 17.7 inches
Paper size: 40.6 x 50.8 cm / 16 x 20 inches
Courtesy of Taka Ishii Gallery, Tokyo
2013/06/22(土)(飯沢耕太郎)
《徳川美術館》(1935)
[愛知県]
7月下旬に刊行する『あいち建築ガイド』の校正中、疑問点があり、久しぶりに徳川美術館を訪問した。古い部分は公式にも「帝冠様式」と説明されているが、私立美術館で、意匠的にも全体的に和風を目指している建築を「帝冠様式」と括ってしまうのは、概念を拡張しすぎかもしれない。なぜなら、「帝冠」の「帝」は政治や公共施設にふさわしいし、「冠」であれば、もっとデザインのハイブリッド性が必要ではないかと思うからだ。
2013/06/22(土)(五十嵐太郎)
成瀬・猪熊建築設計事務所《LT城西》(2013)
[愛知県]
成瀬・猪熊建築設計事務所が名古屋でオープンハウスをやっており、訪問した。考えてみると、リノベーションではなく、新築のシェアハウスという物件は、意外にあまり見たことがない。集合住宅とは違い、13人が共同して暮らす大きな家という感じだった。コストを抑えるために、木造の合理的なグリッドの柱割だが、各部屋にも天井高や眺めなどの違いを与えており、また明るく開放的な共有スペースと個室のメリハリが効いている。
2013/06/22(土)(五十嵐太郎)