artscapeレビュー

2009年09月15日号のレビュー/プレビュー

仏たちの物語

会期:2009/07/11~2009/08/16

MIHOMUSEUM[滋賀県]

釈迦の誕生から大乗仏教のおこり、日本での仏教の広がり、写経、禅など6つのテーマを子ども向けのイラスト、マンガ、ビデオなどを交えて詳細に解説、約70点の資料を展示。特に印象的だったのは白鳳時代の《橘夫人念持仏・後屏飛天拓本》。仏教信仰に篤かったという光明皇后の母、橘夫人の死後、法隆寺に収められた阿弥陀三尊の後屏に描かれたものの拓本。飛天がまとう衣がふわりと風に舞い上がる軽やかな様子がなんとも絶妙で儚げな雰囲気。また、さまざまな時代の写経やそこに込められた人々の思いを紹介するコーナーも興味深い。知識が乏しく写経といってもあまりピンとこなかったけれど、奈良時代には図書寮という役所まで設けて行なわれていた国家的事業だったという写経、書き写された楷書体の美しさと圧倒的な説得力には目を見張るものがあった。

2009/08/05(水)(酒井千穂)

ハール・フェレンツ 織作峰子 写真展

会期:2009/08/06~2009/08/11

渋谷・東急本店7階催し物場[東京都]

ハール・フェレンツ(1908~1997)はハンガリー・ツェルナトハル出身の写真家。ハンガリー人は日本人と同じく姓が名前より先に来るので、ハールがファミリー・ネームである。ブダペストで映画会社の仕事をしながら独学で写真を学び、1937年にパリに移って商業写真スタジオを開業した。39年に国際文化振興会の招きで来日。戦時中の軽井沢への疎開、56~59年のアメリカ滞在の時期を除いては、以後戦後の60年まで、東京でフリーの写真家として活動した。今回の織作峰子との二人展には、日本で撮影されたスナップ、ポートレートを中心に、ハンガリー・パリ時代、1960年以降のハワイ時代を含む代表作が展示されていた。
ハールが写真家として自立した1920~30年代は、ハンガリーでもモダニズム的な写真表現が台頭した時代である。そういえば、ラースロー・モホリ=ナジ、アンドレ・ケルテスらも、ハールと同じく国外に出て活動した写真家だった。ハールの作品にも、彼らと共通する、しっかりと構造的に組み上げられた造形感覚が見られる。日本で撮影された写真には、その画面構成の感覚がカオス的な現実世界を巧みに、精確に秩序づけている様子が伺えて、とても興味深い作例となっている。同時代の日本人写真家の情緒的な作品群と比較すると、まるで別の国で撮影された場面のようにすら見える。ハールのカメラは、戦前、戦中、戦後の日本人と日本社会を、思いがけない角度から照らし出す光源となっているのだ。
織作峰子は10年ほど前からハンガリーに通うようになり、折りに触れて市民生活をスナップしてきた。その親しみやすい情景は、どこかハールが撮影した過去の日本の佇まいと共通しているようでもある。なお本展は「日本・ハンガリー国交樹立140周年記念」として、大阪芸術大学の主催で開催された。

2009/08/07(金)(飯沢耕太郎)

新世代への視点2009

会期:2009/07/27~2009/08/08

銀座・京橋ほかの画廊12軒[東京都]

10回目の今年、ギャラリー58ガルリソルが増えて参加画廊は12軒となった。が、11軒しか回らなかったのは、ギャラリー21+葉が自由が丘に移転して行けなかったから。絵画、彫刻、インスタレーション、ビデオといいぐあいに分かれたが、さまざまな野菜を組み合わせてひとつの漢字を描く古池潤也と、旅先で出会ったものを陶彫でつくる深井聡一郎が印象に残った。つーか、あとは印象が薄かった。

2009/08/07(金)(村田真)

大和武司 展「連想ゲーム」

会期:2009/08/03~2009/08/08

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

寿司のシャリが魚の切身をのせたシャレコウベになっていたり、耳クソをのせた耳掻きがタンポポのように何本も夜空を飛んでいたり……。いちいち説明するのもアホらしいモチーフを、それなりに達者な描写力で描くギャップ。

2009/08/07(金)(村田真)

菊池絵子 展

会期:2009/07/27~2009/08/08

OFFICE IIDA[東京都]

上記「新世代への視点」の藍画廊にも出ていた絵子ちゃんの個展。雪だるま、ボタン、時計などを紙に鉛筆で小さくポソッと描いている。印象は薄いけど捨てがたい作品。

2009/08/07(金)(村田真)

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