artscapeレビュー

2009年09月15日号のレビュー/プレビュー

小泉明郎

会期:2009/07/25~2009/11/08

森美術館ギャラリー1[東京都]

どう反応していいのやら、じつに居心地も後味も悪い映像作品。

2009/08/08(土)(村田真)

建築家坂倉準三展

会期:2009/05/30~2009/09/06

神奈川県立近代美術館鎌倉[神奈川県]

上野の国立西洋美術館では開館50周年を記念して「ル・コルビュジエ展」が開かれていたが、その弟子で西洋美術館の設計も手伝った坂倉準三は、没後40年記念で彼自身の手になる「鎌近」で回顧展を開催。坂倉というとこの鎌近しか知らなかったが、羽島や呉などの市庁舎や東京日仏学院なども手がけてるんですね。意外だったのは、新宿西口広場のデザイン。かつてこの場所で集会やデモが行なわれたとき、当局は「広場でなく通路だから立ち止まるな」と強弁して、若者を一掃しようとしたことがある(その後ホームレスを一掃した)。この「広場」を設計した坂倉さんはどう思っていたんだろう。

2009/08/08(土)(村田真)

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越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009 感想1

会期:2009/07/26~2009/09/13

越後妻有地域[新潟県十日町市,津南町] 760km2[新潟県]

はじめて訪れた。出典作家のひとりである彦坂尚嘉がディレクターをつとめるアート・スタディーズと、建築系ラジオメンバーによる合同ツアー企画があり、4日間かけて現地をまわった。それでも約370点を数える作品のうち、ごく一部しか見ていない。よって客観的なレビューにはならないが、はじめて現地を回った個人の感想として、三つほど書き残しておきたい。
【感想1】ガイドブックを持って、広大な現地を「探索」する。何よりこの感覚。20人近くの参加者は、途中複雑に分裂と合流を繰り返しながら、4台の車に分かれて移動し、現地を回った。アートを見るということ以上に、どういう回り方をしても、越後妻有の自然環境のさまざまな場面に出会うことになる。大雨にもあった。虫にもさされた。しかしよい作品を展示し見るということ以上に、こういう体験をすることこそがこのトリエンナーレの目的なのだろうから、すっかりこの大地の芸術祭の本質を味わってきたといえるだろう。

2009/08/09(日)(松田達)

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越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009 感想2

会期:2009/07/26~2009/09/13

越後妻有地域[新潟県十日町市,津南町] 760km2[新潟県]

【感想2】筆者は建築の設計をやっているので、必然的に建築系の作品が気になった。トリエンナーレは2000年にはじまり今回で4回目を数えるが、建築の作品を見ていると予算の問題が気になった。おそらく、作品を同列に並べて比較することが難しい状況が発生しているように思われた。建築だけに限らない問題だろうが、過去に複数回出品している作家の場合、今年の作品にかけられたコストが、おそらく例年に比べてかなり低いだろうことは容易に推測できた。もちろん、だからといって出品作家がそれを言い訳にできるわけではないはずだが(建築では特に、予算という条件のもと何ができるかが問われる)、公募に出し、予算を与えられ、作品をつくるというプロセスを考えた場合、おそらく今年出品した作家は、経済的に不利な条件があっただろうことは念頭においておくべきだろう。

2009/08/09(日)(松田達)

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越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009 感想3

会期:2009/07/26~2009/09/13

越後妻有地域[新潟県十日町市,津南町] 760km2[新潟県]

【感想3】先の二つの感想をふまえたうえで、アートと建築の境界線を考えるのに、これほど絶好の芸術祭はないだろうと思われた。いや、むしろアートと建築がスリリングにその境界を横断しつつあるのがこのトリエンナーレではないかと思った。ハーマン・マイヤー・ノイシュタットの《WD スパイラル・パートIII マジック・シアター》や國安孝昌の《棚守る竜神の塔》は、アーティストによる作品であるが、むしろ建築として面白かったし、多くの民家再生プロジェクトは、やはり建築的なプロジェクトである。一方、山本想太郎の《建具ノニワ》や東京都市大学手塚貴晴研究室+彦坂尚嘉の《黎の家》は(後者はその手塚研究室による制作部分であるが)、前者はアイゼンマン的な斜線を取り入れた点において、後者は鍋の集合や墨の色を用いた点において、それぞれの建築家の建築におけるこれまで手法とは異なった視覚言語が現われてきており、アートが建築を拡張させているような印象を受けた。
いずれにしても、考えさせられることの多い、多様な人が多様な問題系を発見する、膨大な可能性を持った芸術祭であると思った。なお、この越後妻有トリエンナーレの作品や具体的なコメントなどを、建築系ラジオにて多く収録した。数多くの興味深い議論が生まれたので、ご参照頂ければ幸いである。
建築系ラジオ(カテゴリー:ET-越後妻有アートトリエンナーレ)

2009/08/09(日)(松田達)

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2009年09月15日号の
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