artscapeレビュー
2010年09月15日号のレビュー/プレビュー
涼音堂電子音楽の夕べ
会期:2010/08/28
京都法然院・方丈[京都府]
電子音楽レーベル“涼音堂茶舖”が毎年開催している「電子音楽の夕べ」。通常は非公開である古刹法然院の方丈で行なわれる電子音楽のライブは、音楽という枠には収まりきらない魅力があり、開催のたびにできれば美術ファンにこそ知ってほしいと思うイベントでもある。そもそも会場の法然院やその庭園自体が美しいのだが、その環境を最大限に生かした粟倉久達による灯りのインスタレーション、東京食堂、OTOGRAPHによる映像インスタレーションなど、若手のアーティストたちによって演出される幻想的な空間と、外から聞こえてくる秋の虫の鳴き声までも取り込んだ音楽とのコラボレートが素晴らしい。毎回これほど来年が待ち遠しくなるイベントはほかにない。
2010/08/28(土)(酒井千穂)
丸山純子「けるけないの森へ」
会期:2010/08/21~2010/08/29
ムーンハウス[神奈川県]
横浜のスタジオ+レジデンスのスペース、ムーンハウスで早2度目の展示。作品は相変わらず水と油で石鹸をつくったり、プラスチックを熱で変形させているのだが、なにか研究発表の場みたいな雰囲気。もっとも今日は田中信太郎さんをゲストに迎えての対談があり、作品は隅のほうへ押しやられていたが。その信太郎さんも「作品をごちゃごちゃ置かず、ひとつに絞れ」と痛烈に指摘していた。ごもっとも。
2010/08/29(日)(村田真)
カタログ&ブックス│2010年9月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
じぶんを切りひらくアート──違和感がかたちになるとき
表現方法や考え方もまったく違う、アーティストと呼ばれる人たちへのインタビュー集。奥の深い話だけではなく、子どもの頃の話や、どのようにしてアーティストになったかなど、わかりやすい話を多く収録。
美術手帳 2010.9 特集 妹島和代+西沢立衛 SANAA
妹島和世と西沢立衛による建築ユニット、SANAAの特集号。2010年プリツカー賞を受賞した彼らのこれまでの作品を振り返るとともに、最新のインタビューを掲載。
建築が生まれるとき
建築家・藤本壮介の著作集。第一部では、著者自身が手がけたほぼすべてのプロジェクトについての解説が多数の図版とともに掲載され、作品集のような趣になっている。個々の建築についての断片的な文章を年代順に整理することで、各プロジェクト相互の繋がりが浮き彫りになる。第二部では、著者が感動した建築や出来事について書かれた文章がまとめられている。
三輪眞弘音楽藝術 全思考 一九九八-二〇一〇
音楽とは何なのかと考える、現代音楽の作曲家三輪眞弘。彼の作品解説、制作の方法、対談、雑誌に発表したテキストなど、さまざまなアプローチからの文章を掲載。
東京──変わりゆく町と人の記憶
三十年前の東京に生きる人々と街の表情を、臨場感あふれる写真と取材記事により22のシーンに写し取る。木場、東京証券取引所、神田青果市場、相撲部屋、喫茶店、床屋、風呂屋、かつぎ屋さんなど、今ではもう見ることのできない多くの懐かしい情景が蘇る。建造物資料としても貴重。[秋山書店サイトより]
写真空間4 特集 世界八大写真家論
誰もが写真を撮れる時代に、しかし人々を圧倒する「作品」を撮り続ける写真家たち。見る者を魅了してやまないエグルストン、ショア、グルスキー、森山大道、中平卓馬などの代表的な写真家8人と作品を紹介し、多様な角度から作家と作品の核心を照らし出す。[青弓社サイトより]
ゼロから始める都市型狩猟採集生活
〈都市の幸〉で暮らす。そのとききみは、政治、経済、労働、あらゆるものから解放され、きみ自身にしかできない生活を獲得するだろう。「0円ハウス」で注目を集める著者による、都市で創造的に生きるための方法論。[太田出版サイトより]
反アート入門
「アート」という言葉が氾濫している今、アートとはどういうものか、という問いに挑んだ一冊。美術批評家・椹木野衣による「あまりに根源的な(反)入門書」。
死にゆく都市、回帰する巷 ニューヨークとその彼方
ニューヨーク在住の気鋭の批評家による、初のエッセイ集。00年代末、激動のアメリカ─その渦中から垣間見えた「世界変革」の可能性とは?「世界民衆」たちが響かせる豊穣な鼓動に耳を澄まし、「死にゆく都市」への眼差しのもと、来るべき「巷としての都市」への夢想をここに開始する。[以文社サイトより]
2010/09/15(artscape編集部)
プレビュー:軽い人たち
会期:2010/09/06~2010/09/25
GALLERY wks. 、ART SPACE ZERO-ONE[大阪府]
木内貴志、中村協子、高須健市、吉田周平という、ユニークな4名の顔ぶれに期待が高まるグループ展。すでにオープンしているのだが、まだ見ていない。「表現したいこと」に縛られた表現ではなく、 外で起こっていることに軽やかに反応していく作品を通して 「作家の内的動機=作家のオリジナリティの核」 となりがちな状況に問題提起するという狙いがあるのだそう。参加作家それぞれの強烈な個性がどんな展示空間を創出するのか楽しみにしている。
2010/09/15(水)(酒井千穂)