2017年12月15日号
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artscapeレビュー

井上裕加里「小さな世界」

2013年10月15日号

会期:2013/09/17~2013/09/22

KUNST ARZT[京都府]

対面するように設置されたモニタでそれぞれ、土を詰めた大きな袋を引き摺りながら作家自身が街中を歩く映像が上映されていた。引き摺られ、破れた袋からは土が少しずつ漏れ出し地面に撒かれ、歩くたびに後方にラインを引いていく。よく見ると二つの映像は、街中の背景が異なることにも気がつくのだが、聞くとこれは日本と韓国でそれぞれ行なわれたパフォーマンスなのだそう。日韓の領土をめぐる二国の関係にアプローチする作品で、撒かれていく土は「領土」を象徴していた。会場ではほかに、赤と白の帽子と体操着を身につけた二人の女の子がそれぞれ日本語と韓国語で「It's a small world」を歌いながら砂場の砂山を取り除く「旗とり競争」ゲームを延々と続ける映像作品《It's a small world》、実際にある高校のクラスで協力してもらった作品で、クラスのメンバーを一人ずつ指名し、教室から除外していくという作品《grouping》も上映されていた。国家間やひとつのコミュニティにおける人間関係など、重く扱いにくいとも言える問題に触れているが、現実社会の情け容赦ないあり様を鋭くもあっさりと表現する井上の作品にはスマートな魅力があり印象に残った。また、《it's a small world》には韓国語と日本語両方の手書きの対訳歌詞も展示されていた。各言語の歌詞を対比させるというだけでなく、このメジャーソングのレトリックにも目を向ける井上の眼差しも感じられるものだった。

2013/09/21(土)(酒井千穂)

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