川田喜久治「Unknown 2013」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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川田喜久治「Unknown 2013」

2013年10月15日号

会期:2013/07/20~2013/10/20

ライカギャラリー東京[東京都]

川田喜久治は須田一政よりもさらに年長の1933年生まれ。ということは今年80歳になるわけだが、創作意欲はまったく衰えを知らない。「2013年1月20日にライカMモノクロームを手にしてから今日まで毎日作品を作り続けている」というのだから恐れ入る。今回のライカギャラリー東京での個展には、日々撮り続けた「眼の日記」とでも言うべきモノクロームのスナップ作品14点が展示されていた。川田の写真観もまた、明晰で揺るぎがないのは、会場に掲げられた以下のコメントを読んでもわかる。
「アンノウンという、不明であやしいものへ日々接近する。突然の反応とシャープなピントが見知らぬものとシンクロする。そのとき、なにかが逸脱し、異化されたものが現れる?」
ここで川田がいう「アンノウンという、不明であやしいもの」とは、須田一政の「未知のナニ」とほぼ同義だろう。両者とも日常のただなかから、自らの思惑を外れた「異化されたもの」を拾い集めようとしているのだ。だが、須田の「テンプテーション」の、ぬめぬめと蠢きながら、湿った真綿のようにまつわりついてくるような感触と比べると、川田のそれはより乾いていて、モノとして輪郭がエッジのようにくっきりと切り立っている。それはむろん、彼らの写真家としての体質の違いからくるものだ。観客は異なった入口から、都市の現実に裏返しに貼り付いている悪夢のなかに入り込んでいくわけだが、もしかすると彼らの世界は、どこかで双子の臍の緒のようにつながっているのかもしれない。

2013/09/05(木)(飯沢耕太郎)

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