2018年10月15日号
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artscapeレビュー

高橋万里子「人形画」

2013年10月15日号

会期:2013/09/24~2013/10/20

KULA PHOTO GALLERY[東京都]

2年半ぶりの個展だという。2011年3~4月、まさに東日本大震災が起こった時期に、高橋万里子はphotographers’ galleryとKULA PHOTO GALLERYで個展「Lonely Sweet/ Night Birds」を開催していた。スイーツの商品見本と鳥の剥製をややブレ気味にクローズアップで撮影した、いかにも高橋らしいミステリアスな雰囲気の作品だったのを覚えている。
今回展示された「人形画」は、それに比べるとかなり大きく変わってきている。被写体になっているのは、彼女の友人がフリーマケットで買い求めてきたというスイス製の民族人形。人形というテーマそのものは、高橋の写真にごく初期から登場してくるのでそれほど意外性はない。変わったのはその手法で、カラーコピーされた人形の写真の周囲はアクリル系の絵の具で黒く塗りつぶされ、顔の部分は色鉛筆で加色され、きのこのような形状の奇妙な帽子や衣服には、ファッション雑誌の一部を切り抜いてコラージュが施されている。しかもそれらの加筆、コラージュは一点だけでなく、ヴァリエーションとして増殖していく。高橋は東京造形大学造形学部デザイン学科でグラフィック・デザインを学んでおり、このような手法を用いるのは別に意外なことではない。だが、これまではあくまでも写真の味付けや装飾に留まっていたグラフィック的な要素が、今回のシリーズではより前面に押し出されてきている。
そのことを決して否定的に捉える必要はないだろう。1930年代の小石清、花和銀吾、平井輝七ら関西の前衛写真家たち、また1950年代に彗星のように登場して姿を消した岡上淑子らのフォト・コラージュ作品の系譜を、ぜひ受け継いでいってほしいものだ。

2013/09/24(火)(飯沢耕太郎)

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