2019年11月15日号
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artscapeレビュー

ホンマタカシ「between the books[Mushroom…]」

2011年06月15日号

会期:2011/05/02~2011/05/15

LimArt[東京都]

ホンマタカシからの嬉しいプレゼント。東京オペラシティアートギャラリーの「ニュー・ドキュメンタリー」展(4月9日~6月26日)のカタログの巻末に掲載されていたきのこの写真を見て「これは!」と喜んでいたのだが、意外に早くLim Artでの展示が実現した。
僕らきのこフリークにとって、きのこの写真が掲載されている図鑑類はとても大事なアイテムだ。だが写真評論家として見れば、図鑑はあくまでも図鑑であり、たしかに生態的には正確に描写されてはいるが、表現としてのふくらみにおいては物足りない。写真作品としてのクオリティの高さと、きのこの生きものとしての魅力を両方とも満足させてくれるようなきのこ写真がないものかと、以前からずっと思っていたのだが、それが本当に実現した。ホンマタカシの手法は、まさにきのこたちの姿を繊細に描写したポートレートといえるだろう。白バックに一体ずつ精妙なアングルで捉えられ、土や枯れ草がついた根元の菌糸の部分にまでしっかりと目配りされた写真群は、実に愛らしく、しかも凛とした生命力にあふれている。僕にとってのホンマの最高傑作は、1990年代に『S&Mスナイパー』誌に連載された「Tokyo Willie」のシリーズだったのだが、ついにそれを超える作品が登場したといえるだろう。
展示にも工夫が凝らされている。「between the books[Mushroom…]」というタイトルは、アート関係の洋書古書店であるLim Artの本の間に、きのこの写真が並んだり挟み込まれていたりしている展示にぴったりしている。まさに「書棚のきのこ狩り」の気分を味わわせてくれるのだ。写真にはきのこのほかにトケイソウのような植物や山や森の風景も含まれている。それはそれで悪くはないのだが、わがままを言えば、今回はきのこだけに絞ってほしかった。

2011/05/08(日)(飯沢耕太郎)

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