2019年11月01日号
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artscapeレビュー

大和田良「FORM」

2011年06月15日号

会期:2011/05/21~2011/07/13

大宮盆栽美術館[埼玉県]

初夏の暑い日差しの日、埼玉県・土呂の大宮盆栽美術館に出かけてきた。大和田良が盆栽を撮影した「FORM」展のオープニングがあったためだが、大宮周辺に「盆栽村」ができていることをはじめて知った。盆栽というものもはじめてきちんと見ることができたのだが、けっこう面白かった。盆栽はいわば自然のミニチュア版といえるだろう。松や真柏のような樹木が、そのままスケールを縮小して盆の上に再現される。その意味では、盆栽は立体化した写真といえなくはない。全体を見ればリアルだが、細部を見れば現実とはかなり異なっているという意味でも、写真と似ているのではないだろうか。
大和田良がやろうとしているのは、いわばその盆栽の「写真的な」あり方を踏まえつつ、再構築するという興味深い試みだった。デジタルカメラによって盆栽の細部のフォルムが精密に捉えられるとともに、やや角度を変えて撮影した画像を「スティッチング」の技術によってコラージュ的につなげるという実験も試みている。このような取組みは、緒についたばかりであり、まだ完成されているようには見えない。だが、盆栽のような日本の伝統文化に着目することは、これから先実り多い成果を生んでいくのではないだろうか。少なくとも、盆栽が本来備えている妖しくも美しい人工美の極致は、写真にはとても相性がいいのではないかと思う。このシリーズをさらに推し進めていくと、写真を通じて日本人に特有の細やかな美意識が浮かび上がってきそうな気もする。
なお、展覧会にあわせて渓水社から『FORM Scenery Seen Through Bonsai』が刊行されている。端正なデザイン、しっかりした造本の完成度の高い写真集である。

2011/05/20(金)(飯沢耕太郎)

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