artscapeレビュー

赤レンガ卒業設計展2011

2011年06月15日号

会期:2011/05/13~2011/05/16

横浜赤レンガ倉庫 1号館2階[神奈川県]

震災で延期していた赤レンガ卒業設計展が、二カ月遅れで開催にこぎつけた。審査員は、ヨコミゾマコト、藤村龍至、谷尻誠、中山英之、五十嵐ら。午前の審査で3つの作品を推薦した。隙間に充填されたコンクリートの壁がインフラとして残り続ける東京都市大学の矢野健太「都市の型枠」、私の空間を追求した日大の石原愛美「わがスーパースターの家」、そして地図を変異させるプログラムを提案した前橋工科大の神田大紀「東京bug:model」である。審査員に評価軸を提示することを要求する卒計イベントの風潮に、違和感を覚えていることもあり、あえてまったく共通項のない、ばらばらの作品群を選んだ。そして全体討議の結果、矢野の案が最優秀賞となる。講評を経て、五十嵐賞は、魅力的な敷地と産業遺産に絡めて、詩的な風景を創造する稲垣志聞「タネの図書館」に出す。
後半は「建築の方向性に関するシンポジウム」だった。それぞれの審査員が学生時に影響を受けたもの、いまどきの学生観、そして震災以降の建築を語る。筆者としては、今回のテーマが「directions」と複数形になっていたように、震災だからといって、みなが同じ方角に向く必要はないと思う。価値観はばらばらでかまわない。

2011/05/15(日)(五十嵐太郎)

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