2019年07月15日号
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artscapeレビュー

中村紋子「Silence」

2011年06月15日号

会期:2011/05/07~2011/06/05

B GALLERY[東京都]

中村紋子から届いたDMに「マジメな写真展します」と添え書きしてあったので、どういう展示なのかと思って見に行った。というのは、中村は以前『週刊あやこ』というイラスト、写真入りの小冊子を発行したり、ピンク色の長い耳をつけたサラリーマンたちの演出的なポートレート「ウサリーマン」のシリーズを発表したりしていて、どちらかといえば「マジメ」にはほど遠い作風だったからだ。
「Silence」はたしかに張りつめた緊張感が漂う、「マジメ」な作品群だった。雲、花、魚群、水面の波紋、空を行く鳥の影など、自然を写している写真が多いのだが、動物の剥製、遊覧船の老夫婦、眠る女性の横顔なども含まれている。生まれたばかりの赤ん坊の写真もあるが、そこにも産声や身じろぎの気配はなく、どこか標本めいた沈黙が画面を支配している。楽しくて、元気いっぱいの印象が強かった中村にこんな一面があったことはたしかに意外であり、本人もそれを「二面性」という言い方で認めている。写真家としての表現力の高さは、このシリーズにも充分に発揮されているのだが、やはり違和感が残る。おそらく何かきっかけがあれば、その極端に引き裂かれたふたつの世界が融和し、溶け合うことがあるはずだ。中村自身は、その時期はかなり先のことと思っているようだが、そうともいえないのではないだろうか。それこそ「マジメ」にふたつの世界の線引きなどせずに、時々気軽にひょいと越境してみるといいと思う。中村の「笑えない」作品をずっと見せられるのは少し辛い。
展覧会と同時に『Silence』(リブロアルテ、発売=メディアパル)も刊行された。小ぶりだが、しっかりと編集された写真集だ。

2011/05/08(日)(飯沢耕太郎)

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