2019年09月15日号
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artscapeレビュー

森山大道「Record No.19 -Toscana-」

2011年06月15日号

会期:2011/04/22~2011/05/29

BLD GALLERY[東京都]

森山大道の『記録』のシリーズがいつのまにか19冊目になっていることにちょっと驚いた。『記録』はその時々に偶発的に彼の前にあらわれてくる事象を、拾い集めるようにして撮影していくスナップショットのシリーズで、1972~73年に1~5号を刊行し、その後、長い間をおいて2006年の第6号から再び定期的に刊行されるようになった。ほぼ季刊のペースで既に10冊以上が刊行されており、最新刊が2011年4月に出た第19号である。その出版にあわせて、東京・銀座のBLD GALLERYでは個展も開催された。
森山にとってこのような小出版物は、自分の立ち位置を確認するとともに、大きな仕事への力を蓄えるウォーミングアップの意味を兼ねているのだろう。だがそれ以上に、自分の好きなものをさっと形にしていくこういう作業にこそ、このたぐいまれな嗅覚と動体視力を備えた天性のスナップシューターの力量が、はっきりとあらわれてくるともいえる。今回の「Toscana」のシリーズも、リラックスした雰囲気のなかに、締めるべきところはきりりと締めた見事な出来栄えである。
2010年9月、イタリアのモデナで開催された400点以上の自選作品による大回顧展のときに、モデナと「半日余りカメラを手に、あちこちの街区を撮り歩いた」フィレンツェで撮影したスナップを集成したものだが、街を覆っている装飾的な表層(ポスター、看板、仮面、建築物の外壁など)の処理が実に颯爽としていて決まっている。森山の写真のグラフィカルな魅力がよく発揮されているシリーズといえるだろう。そんな街並を縫うように、これまた颯爽と闊歩しているセクシーな「オネエサンたち」、そのかっこよさに口笛の一つも吹きたくなってくる。

2011/05/18(水)(飯沢耕太郎)

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