artscapeレビュー
毘堂「i-con」
2011年06月15日号
会期:2011/05/10~2011/05/28
メグミオギタギャラリー[東京都]
額縁のなかにレリーフ状の顔が鎮座する。レオナルドの《モナ・リザ》をはじめ、ミケランジェロ、ラ・トゥール、フェルメール、ピカソ、モディリアーニなど名画に登場する女性の顔ばかり。木彫りに彩色したもので、ひもを通す穴や瞳の部分にものぞき穴を開け、まるでお面のようだ。いや実際、作者の本職は能面師だという。おもしろいのは、3次元の顔が2次元化された絵画を再び3次元化しているため、たとえばフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》のように斜め向きに描かれた絵は、やや歪んで立体化されていること。これはマンガを3次元化したフィギュアにも通じる、次元を往還する視覚体験といえる。しかもていねいなことにひび割れまで再現するという手の込みよう。絵画、工芸、トリックアートの境界線上に立つキワドい作品。ちなみに、お値段は高いほうから、レオナルド《モナ・リザ》、フェルメール《真珠の耳飾りの少女》、その他の順。やっぱり有名でひび割れが多いものほど高いようだ。
2011/05/18(水)(村田真)