artscapeレビュー
画家たちの二十歳の原点
2011年06月15日号
会期:2011/04/16~2011/06/12
平塚市美術館[神奈川県]
何年か前、兵庫県立美術館で画家の最後の作品を集めた「絶筆」展ってのをやったけど、これはその逆で、画業の出発点に焦点を当てる試み。タイトルの「二十歳の原点」というのは高野悦子の著書から採られた言葉だが、どっちかというと原口統三にどっぷり浸かった経験のあるぼくとしては「二十歳のエチュード」にしてほしかったなあ。ま、ふたりとも20歳でデビューするどころか自殺しちゃうんだけど(自殺することによってデビューしたともいえるが)。ともあれ、ここでいう「二十歳」とは正確な年齢ではなく、画家がデビューする10代後半から20代前半までの幅をもたせた年代のこと。留学先のパリで法律の勉強から画家へ転向しようとした黒田清輝の自画像から、やけに老成した岸田劉生の22歳の自画像、「へえこんないい絵を描いていたんだ」と見直した中川一政の少女像、とても10代の絵とは思えない関根正二の人物画あたりまでは想定内だった。しかし、最初からいまと変わらぬ水玉を描いていた草間彌生、19歳でグラフィックデザイナーとしてデビューした横尾忠則のポスター、なぜか津波に襲われた東北の街を彷彿させる森村泰昌の漁村風景、みずから「糞絵」といいながら「処女作にすべてがある」と認める会田誠の通称「まんが屏風」あたりになるともう想定外。というより、あまりに現在につながっているのが想定外だったのだ。会田のいうとおりまさに「処女作にすべてがある」。いやあおもしろかった。
2011/05/03(火)(村田真)