2019年07月15日号
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artscapeレビュー

『ヒューゴの不思議な発明』

2012年04月01日号

会期:2012/03/01

TOHOシネマ梅田ほか[大阪府]

1888年に世界最初の映画カメラ「キネトグラフ」がトマス・エジソンによって開発されているが、リュミエール兄弟が「シネマトグラフ」をつくり、1895年12日28日に観客の前で動く映像を映したことを基準にするなら、映画はその誕生からわずか110年あまりの、(エジソンにしろ、リュミエール兄弟にしろ)新しい芸術ジャンルである。しかし、その変貌は他の芸術ジャンルに比べ、より激しく、独自性を保証する基盤はときに脆い。脆いとは、他の芸術ジャンル、例えば、文学、美術、音楽、メディアアートとの関係において影響されやすく、その土台が揺らぎやすいという意味だ。それはともかく、この頃、映画へのノスタルジーを感じさせる映画が目につく。本年度アカデミー賞の作品賞を受賞した『アーティスト』や(まだ観ていないが)、今回紹介する『ヒューゴの不思議な発明』がそうだ。本作で巨匠マーティン・スコセッシ監督は思いっきり初期映画への、そしてジョルジュ・メリエスへのオマージュを送っている。無声からトーキーへ、2Dから3Dへと、変貌の激しさと土台の脆さを克服するために、スコセッシ監督は映画の本質を、その楽しさを再考したかったのかもしれない。メリエスが舞台に立ち、彼の映画が映し出される場面では、正直、胸がじんとした。ただ、スペクタクルを望むなら、あるいは物語の面白さを期待するなら、他の映画をオススメしたい。[金相美]

2012/03/14(水)(SYNK)

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