artscapeレビュー
GRAPHIC WEST 4「奥村昭夫と仕事展」
2012年04月01日号
会期:2012/01/18~2012/03/08
dddギャラリー[大阪府]
江崎グリコやロート製薬をはじめとするロゴマークや、牛乳石鹸のパッケージ等のデザインでよく知られ、京都大学客員教授をも務めるデザイナー、奥村昭夫の全仕事を紹介する展覧会。なんといっても本展で驚くべきは、デザイナー本人が会場で仕事をしている姿を見られること。PCを用いてそこでなされる仕事内容が壁面に投影され、展示の一部となっている。また、来場者がそこでデザイナーに仕事を依頼することもできる。それはオリジナルの名刺とポスターをデザインする、「仕事しますプロジェクト」。奥村氏は遊び心あるデザイン──それも依頼者の個性を反映させた、その人自身を象徴するような──の名刺をあっという間につくりだす。執筆者が訪問した時点では50件近くの注文があったが、それぞれがまったく異なるデザイン、まさに世界で一枚きりの名刺であった。もうひとつ心躍る試みは、デザイン作品が名刺型カードのかたちで棚に一堂に並べられ、それをカタログの代わりに持ち帰れること(それを入れる箱まである)。ひょいと裏返すと、「奥村昭夫問答集」がみえる[図1]。氏が重要視するのは「正しい」「面白い」「新しい」デザイン。正確な情報を伝え、楽しく、新しいかどうか、という彼の判断基準については、本展の全仕事を見るだけでもなるほどと思わせる。またデザイナーにおいては、問題解決できる「思考」力が大事とも語る。氏は、「デザインって楽しいでしょう!」と言い、目を輝かせる。彼の諸作品が放つパワーに加え、デザイナー奥村昭夫氏に魅了された展覧会であった。本当に、「デザインって楽しい!」。[竹内有子]
2012/02/24(金)(SYNK)