2019年11月15日号
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artscapeレビュー

林加奈子

2012年04月01日号

会期:2012/02/18~2012/03/24

Gallery αM[東京都]

ストリートのアートといえば、グラフィティやスケートボード、ブレイクダンス、ラップなど、広義のヒップホップカルチャーとして語られることが多い。むろん、スクワッティングや海賊放送なども含めれば、より広いカウンターカルチャーの文脈に接続できるだろうが、いずれにせよ「ストリート」には男性文化の色合いが濃かった。アイス・キューブにせよ、バスキアにせよ、バンクシーにせよ、ストリートとは何よりもまず男性にとっての舞台であり、女性はあくまでも従属的な立場に甘んじるほかなかった。だが、本来ストリートが誰にとっても表現が可能なオープンな場であり、あらゆる人びとにとっての公共財であるとすれば、こうしたジェンダー・バイアスはきわめて不当であると指摘しなければならない。社会が男性だけで成り立っていないように、ストリートは男性だけのものではない。いや、社会の中枢が男性に牛耳られているからこそ、逆にストリートは女性が闊歩しなければならない。
こうした点で、林加奈子のパフォーマンス作品は興味深い。路上を行き交う人びとの前でしゃがみこんだり、公園の樹木に着衣の毛糸を延々と巻きつけたり、林のパフォーマンスはストリートと少女性を両立させながら、ヒップホップカルチャーに偏っていた従来の男性中心主義的なストリート・アートを是正しているからだ。ややもするとすべての作品に通底する詩的雰囲気に流されてしまいがちだが、林の作品の醍醐味は詩的な陶酔感というより、ストリートの野蛮性に少女性を巧みに忍ばせる鮮やかな手並みにあるのであり、その一見無邪気に見える振る舞いこそ、従来のストリート・アートにはなかった林加奈子ならではの特質であるように思う。

2012/03/02(金)(福住廉)

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