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artscapeレビュー

kokeshi pop──ポップでカワイイこけしの世界

2012年04月01日号

会期:2012/03/02~2012/03/12

PARCO MUSEUM[東京都]

第3次こけしブームなのだそうだ。最初のブームは第二次大戦前。地域によって形も呼び名も異なっていた木製のお土産品が1940年に「こけし」の名前で統一された。第2次のブームは戦後1960年前後から始まる。千趣会の前身である「味楽会」がこけしの頒布会である「こけし千体趣味蒐集の会」を始めたのが、1954年。1959年には第一回の「全国こけしコンクール」が開催されている。そして、2009年前後から、それまでの蒐集家とは異なる20代30代の女性を中心に、第3次のこけしブームが始まったようである。2010年4月には『kokeshi book──伝統こけしのデザイン』(青幻舎)が刊行され、ヒット。このブームのさなかに東日本大震災が起きたことで、おもに東北地方でつくられているこけしの蒐集には復興支援という活動も加わった。2009年に鎌倉にこけしとマトリョーシカの店「コケーシカ」を開いた写真家・詩人の沼田元氣は、雑誌『こけし時代』を創刊。『kokeshi book』を制作したデザイン・ユニットCOCHAEはリサイクルこけしの販売による利益を震災の義援金として寄付する活動を行なう。「KOKESHIEN!」(こけし+支援)プロジェクトを主催し、2011年12月にはメキシコでもこけしの展覧会を開催した(2011/12/05~12/10)。ほかにも、横浜人形の家では震災復興を支援する「こけしとその仲間たち」展(2011/11/12~12/18)が、滋賀県・観峰館では「ガンバロウ日本!! 東北伝統こけし展」(2012/02/01~03/20)が開催されている。六本木アートナイト2012にはYotta Grooveによる巨大こけし《花子》が登場(2012/03/24~03/25)。4月3日からは福島市の西田記念館で「WE LOVE KOKESHI!」展が開催される(2012/04/03~07/31)。
 「kokeshi pop」展はCOCHAEが企画協力するこけしの展覧会。「ポップでカワイイこけしの世界」というタイトルのとおり、明るい色彩、ポップなショーケースに収められたこけしたちは、伝統工芸品でありながらも、新しい魅力を見せてくれている。東北各地の工人(職人)による作品ばかりではない。こけしといえば、体験絵付け。しりあがり寿、安齋肇ら漫画家やイラストレーターが絵付けをしたこけしも楽しい。また、こけし蒐集家でもあった童画家・武井武雄が描いたこけしを紹介するコーナーも設けられ、展覧会にあわせて『武井武雄のこけし』(cochae編、パイインターナショナル、2012)も刊行された。
 先行して開催された大阪・梅田ロフト会場(2011/12/28~2012/01/17)には20日間で1万6,000人★1、東京・渋谷パルコ(2012/03/02~2012/03/12)には10日間で1万2,000人★2が訪れたという。展覧会は名古屋パルコ(2012/04/06~04/23)にも巡回する。ブームを盛り上げ、さらに新たな層を取り込んでゆく。「目にする機会が減ったから魅力を知らないだけ。ならば、目にする機会を増やせばいい」★3というCOCHAEの活動は、伝統工芸振興のひとつのモデルにもなりうるのではないだろうか。[新川徳彦]

★1──『産経新聞』2012年3月5日、東京朝刊、東京ニュース面。
★2──『読売新聞』2012年3月22日、朝刊、17頁。
★3──『朝日新聞』2011年12月2日、夕刊、11頁。

2012/03/12(月)(SYNK)

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