artscapeレビュー
聖なる銀──アジアの装身具
2012年04月01日号
会期:2012/02/08~2012/02/23
INAXギャラリー大阪[大阪府]
身を飾る道具を見て、アジアの民族文化の多様性と重層性に思いを馳せた。本展では、東アジア・東南アジア・中央アジア・南アジア・西アジアのアジア5地域における銀の装身具、約270点(日本宝飾クラフト学院コレクション)を展示。一口に身体を装飾するといっても民族によって飾る体の部位、方法、装身具自体の造形性も多種多様である。またそれがはたしてきた役割もさまざまだ。お守りとしての呪術的意味、宗教的意味、財産・投資的意味、権力的意味、儀礼用途、等々。同じ銀でも、銀地に模様の金鍍金が施されたもの、貴石が用いられたものもある。目を引き付けられたのは、トルクメニスタンの「背飾り」[図1]。ハート形の飾り板は、砂漠などで背後から病気や邪視に襲われないように、人を守護するという意味があるそうだ。この効果を増すのが、赤い石(紅玉髄)である。銀とは汚れのない、月にも類比されてきた金属。イスラム世界では幸福をもたらすと言われる。こうしてみると、この銀の煌めきは単に外面からではなく、内側、つまり使い手の長きにわたる歴史文化の厚みから放射されているように感じる。[竹内有子]
2012/02/21(火)(SYNK)