artscapeレビュー

麻生知子「内祝」

2012年04月01日号

会期:2012/03/03~2012/03/31

Gallery Jin Projects[東京都]

「VOCA2011」展に参加した麻生知子の個展。畳やちゃぶ台、焼き魚、親父の剥げ頭などを描いた平面作品を発表した。おもしろいのは、それらの大半を真上から見下ろす視点から描き出しているところ。それらが壁面に展示されているから、水平方向に鑑賞しつつも、垂直方向に見下ろすようなトリッキーな視覚経験を味わえる。今回の新作のなかには盆踊りを描いた作品があったが、これも三面図のようにいろんな視点から描いており、視点がめまぐるしく入れ代わる運動性がおもしろい。麻生が描き出しているのは、彼女にとっての記憶の原風景のように見えるが、それをいろんな視点から再構成することで、見る者に記憶を立体化するトレーニングを求めているようだ。ここに、「平面」の今日的な効能が認められるような気がする。

2012/03/18(日)(福住廉)

2012年04月01日号の
artscapeレビュー