2019年12月01日号
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artscapeレビュー

いまは冬

2012年04月01日号

会期:2012/02/11~2012/03/02

渋谷オーディトリウム[東京都]

RKB毎日放送のディレクター、木村栄文によるドキュメンタリー番組。1972年に制作された35分の短編で、「地の塩の箱」運動の主催者であり詩人の江口榛一に密着した。鍵のない募金箱を全国に設置して、豊かな者は金銭を投入し、貧しい者はそこから借り受けるという運動に身を費やす江口をとらえた映像を見ると、その理想と現実のはざまを、あくまでもたくましく生きようとする姿に圧倒される。それが、例えば人力飛行機というロマンを追究する男を記録した《飛べやオガチ》にも通じていることを思えば、木村栄文の眼を離さなかったのは、おそらくそのようにして両極のあいだで揺れ動きながらも、明るく、壮健に前に進むことを自らに課した人間の生き様だったのではないかと思えてならない。そのように振舞いながらも、どこかで哀愁や憂いを感じさせる人間を、木村は撮りたかったのだろう。

2012/02/27(月)(福住廉)

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