artscapeレビュー
WITHOUT THOUGHT Vol.15 駅 STATION
2016年05月15日号
会期:2016/04/27~2016/05/15
東京ミッドタウン・デザインハブ[東京都]
「Without Thought」とは「思わず」の意。プロダクト・デザイナー深澤直人が主宰するデザイン・ワークショップの15回目は、駅とその周辺で人々が無意識のうちに行なうさまざまな行動、視野、願望が、モノやヴィジュアル、スマホアプリのかたちで具現化される(とはいえ、すべて架空のプロトタイプだ)。例えば東京メトロの路線を表わす色の輪がカラフルなアイシングでコートしたドーナツに見立てられている。食べ物関係では、駅スタンド蕎麦のカップ麺、一見金属製のレールに見える羊羹、電車の車両かプラットホームのように細長いざるそばの器などに、ニヤリとさせられる。爪先が黄色く塗られた子供用のズックはプラットホームの黄色い線とぴたっと揃う。揃った瞬間はきっと気持ちがよい。ということはこのズックを履いた子供は意図せず黄色い線の内側に立つことになる。線路の向こう側に掲げられたゴルフ場の広告写真からは、電車を待つ間に傘でスウィングする(迷惑な)おじさんの姿が(そこにはいないけれども)見えてくる。縦半分サイズの細長い新聞は10年前であれば本当にあって欲しいと思ったかもしれないが、満員電車のサラリーマンのほとんどがスマホとにらめっこしている現在では紙メディアが生き残るための提案とみるべきか、それともスマホが発明されなかった平行世界の新聞なのか。ほかに、歩きスマホの転落防止アプリ(画面に黄色い線が表示される)や、いまどこの駅にいるのかがわかるアプリ(フェイスブックのタイムラインや視聴している動画のあいだに駅名標が表示される)など、実用的な提案のなかに見せ方が優れているものがある。実はチラシにも使われている手拭いの意匠が意図するところがすぐには分からなかったのだが、それと気がついたときに「思わず」膝を叩いてしまった。[新川徳彦]
2016/04/28(金)(SYNK)