artscapeレビュー
TWS-Emerging 2016
2016年05月15日号
会期:2016/04/09~2016/05/08
トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]
今年度第1期は田中秀介、大杉好弘、田中里奈の3人の展示。3人とも共通するものがあり、またレベルも拮抗していて見ごたえがあった。田中秀介のモチーフは家や風景や日用品といった身近なものだが、その日常性をくつがえすような視野や荒い筆触によって、もうひとつの現実を垣間見せてくれる。カセットテープをそのまま小さなパネルに描いた《夕刻巻》など、オッと思わせる。大杉は机上の文具、本、コップ、フィギュアなどを薄めた絵具でサラリと描いているが、レイヤーをかけたようなちょっと現実離れした空気感が漂う。別の部屋には絵のモチーフとなった自作の陶製の置物が展示されている。田中里奈は京都嵐山にあるお寺の庭を換骨奪胎して再構成したもの。木の幹や草などは筆で勢いよく描かれ、絵具のかすれも生かしている。色彩は日本的ともいえるシブイ中間色で、薄塗りと厚塗りの強弱をつけたり絵具に砂を混ぜたり、いろいろ試みている。田中秀介が哲学的、大杉が現象学的だとしたら、田中里奈がもっとも美学的といえるかもしれない。アプローチは異なるけれど、いずれも筆触を生かして「絵画らしさ」を強調しているのが興味深い。
2016/04/23(土)(村田真)