artscapeレビュー
久松知子「芸術家の研究所」
2016年05月15日号
会期:2016/04/08~2016/04/28
岡本太郎記念館[東京都]
現在開催中の「生きる尊厳─岡本太郎の縄文─」展(3/2-7/3)の会場内で、昨年、岡本太郎現代芸術賞の岡本敏子賞を受賞した久松知子の新作2点を展示。1点は《芸術家の研究所》というタイトルで、太郎と敏子を中心に、手前に丹下健三と磯崎新が万博のお祭り広場と太陽の塔の模型を前に対座し、右手に花田清輝や針生一郎らしき顔が見える集団肖像画だ。時代は万博前の60年代末ごろ、場所はまさにこの記念館になった太郎の家。バックには太郎のつくったオブジェや著書などが散りばめられ、左上には巨大壁画《明日の神話》に付加されたChim↑Pomによる福島原発事故の絵も見える。もう1点は、遠景に太陽の塔やキノコ雲がいくつか描かれ、その手前(下半分)に黄色い田畑らしき平面が広がり、画面やや上を新幹線が横切る構図だ。よく見ると鉄腕アトムが飛んでいたり、《明日の神話》にも出てくる第五福竜丸らしき漁船も見える。これは同時期に制作された太陽の塔と《明日の神話》をダブルテーマにした絵だろう。妙なのは、画面の最下部が帯状にセメントで固められていること。ナゾの多い絵だ。
2016/04/21(木)(村田真)