artscapeレビュー
「京都国際写真祭」
2016年05月15日号
会期:2016/04/23~2016/05/22
京都市美術館別館ほか[京都府]
4回目を迎えた「京都国際写真祭」(KYOTOGRAPHIE)。2013年の初回を見た時には、どれだけ続くのかと心もとなかったのだが、質量ともに飛躍的に向上している。今回は「いのちの環」をテーマにしたメインプログラムが13会場で開催されたほか、サテライト展示の「KG+」、関連企画など、50以上の展覧会が開催された。かなり広い地域に散らばっているので、一日ではとても全部回りきれないが、それでも、何日か滞在してじっくり見てみたいと思わせる魅力的な企画が目白押しだった。主催者の仲西祐介とルシール・レイボーズがめざしているのは、「国際的に通用する写真祭にする」ということだが、その志の高さが全体の雰囲気を盛り上げているように感じる。
KYOTOGRAPHIEの特徴のひとつは、美術館やギャラリーだけでなく、京都らしい寺院や町家などの空間を活かした展示が多いことだろう。フィンランド出身の写真家、アルノ・ラファエル・ミンキネンの「YKSI: Mouth of the River, Snake in the Water, Bones of the Earth」(建仁寺内両足院)では、作品が建物の中だけでなく、日本庭園内にも配置されていた。町家の座敷に作品を並べた古賀絵里子の「Tryadhvan(トリャドヴァン)」(長江家住宅)、「マグナム・フォト/EXILE─居場所を失った人々の記憶」(無名舎)、蔵の中に写真と漂流物でつくったランプを展示したクリス・ジョーダン+ヨーガン・レールの「Midway:環境からのメッセージ」(誉田屋源兵衛 黒蔵)も見応えがあった。
インスタレーションやライティングに気を配った「見せ方」にこだわっているのも、KYOTOGRAPHIEの特徴で、昨年逝去した報道写真家、福島菊次郎の「WILL:意志、遺言、そして未来」展(堀川御池ギャラリーほか)では、写真パネルを鉄パイプや鉄の箱を使ったソリッドな装置を組んで展示していた。海洋生物学者のクリスチャン・サルデの写真映像を、高谷史郎が床置きの複数のモニターで上映し、坂本龍一がサウンドをつけた「PLANKTON 漂流する生命の起源」(京都市美術館別館2階)も、高度に練り上げられたインスタレーションを愉しむことができた。
予算的にはかなり厳しいようだが、このクオリティを保ちつつ、「国際写真祭」としてのさらなる広がりを期待したい。将来的には、東川町国際写真フェスティバルのような先行する地域写真イベント、またアジア各地の写真祭などとも相互交流を図ってほしいものだ。
2016/04/27(水)(飯沢耕太郎)