artscapeレビュー
「現美新幹線」試乗会
2016年05月15日号
上越新幹線の越後湯沢駅から終点の新潟駅まで、現代美術で武装した新幹線が走るという夢(悪夢?)のような本当の話。車体の外装は蜷川実花が撮影した長岡の花火。景気よく火花が散って、これで事故など起こしたらシャレにならない。6両の車両には7人のアーティストが作品を展示している、というより、車内を作品化しているというべきか。いずれも新潟県や新幹線をテーマにした作品だが、新潟市の「水と土の芸術祭」のために撮った旧作をアクリルで固定した石川直樹や、沿線の風景を描いた絵をコピー?した古武家賢太郎の作品にはちょっとガッカリ。また、シートにデザインした松本尚や鏡面で抽象構成した小牟田悠介は車内インテリアと同化してしまっている。おもしろかったのは、カラフルな布切れを上下対称に組み合わせて宙づりにした荒神明香の作品。新潟県とも新幹線とも直接関係ないけど、地上ではありえない振動により微妙に揺れるという予想外の効果を見せている。高速で走る密閉空間に展示するのだから制約は多いとは思うけど、揺れる、窓の外の風景が変わる、半分近くがトンネル、展示空間(車両)が細長い、といった美術館やギャラリーにはない特質を作品に採り込めれば、「超特急アート」として名が残るだろう。どうでもいいけど、現美(ゲンビ)というネーミングはちょっと古くさくないか? 6月まで土日のみ、1日3往復運行。7月以降の情報はウェブサイトで確認を。
2016/04/12(火)(村田真)