artscapeレビュー

「MACK CONCEPT TOKYO」

2016年05月15日号

会期:2016/04/05~2016/04/23

IMA CONCEPT STORE[東京都]

MACKは元Steidlにいたマイケル・マックが2011年にロンドンで立ち上げた写真集専門の出版社。設立から5年あまりを経て、ルイジ・ギッリやアレック・ソスをはじめとする高クオリティの写真集を年間20冊というハイペースで刊行して、世界中の写真関係者の注目を集めている。そのMACKから、昨年刊行の川田喜久治『The Last Cosmology』に続いて、日本人写真家3人の写真集が出版されることになった。深瀬昌久の『HIBI』、ホンマタカシの『THE NARCISSISTIC CITY』、細倉真弓の『Transparency is the mystery』である。そのお披露目を兼ねて開催されたのが本展であり、同会場ではこれまで刊行されたMACKの出版物も展示・即売されていた。
ピンホールカメラで撮影された都市の景観で構成したホンマの『THE NARCISSISTIC CITY』や、ヌードと鉱物の結晶の写真を交互に見せる細倉の『Transparency is the mystery』も悪くないが、なんと言っても見逃せないのは、深瀬昌久自身が構成した最後の個展となった「私景’92」(銀座ニコンサロン)で展示された、111点の連作「ヒビ」を1冊にまとめた写真集『HIBI』である。自己追求の果てに袋小路に落ち込んだ写真家の絶望的な心境を、胸を抉るようなユーモアでまぶしたこのシリーズは、個展以後まったく公開されることがなかったので、その全貌が姿を現わしたことは驚き以外のなにものでもない。深瀬が写真を通じて何を見ようとしていたのか、その最終的な答えのひとつがここにあるのではないだろうか。
MACKはこれ以降も日本の写真家たちを積極的にフォローしていくようだ。どんな写真集が出てくるのかとても楽しみだ。

2016/04/06(水)(飯沢耕太郎)

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