artscapeレビュー

TOKYO PHOTO 2009

2009年10月15日号

会期:2009/09/04~2009/09/06

ベルサール六本木1F・BF[東京都]

写真作品だけを展示する本格的なアート・フェアは日本でははじめてではないだろうか。ようやく実現したこの画期的な企画が、来年以降も継続することを強く望みたい。ただ、まだ初日だったので最終的な結果はわからないが、観客の数は多いものの、作品の販売・購入にはあまり結びついてはいないようだ。
会場は二部構成で、1Fが「PHOTO AMERICA」ということで、サンディエゴ写真美術館のディレクター、デボラ・クロチコが選出したアメリカの近代写真、現代写真の展示を中心にいくつかのギャラリーが出品していた。BFは日本及び香港のパートで、18あまりのギャラリーが参加。ほかにアドバイザリー委員会のメンバーのひとりである後藤繁雄と写真雑誌『PHOTOGRAPHICA』が選定した「TOKYO PHOTO FRONT LINE」という枠で、若手作家8人(頭山ゆう紀、塩田正幸、津田直、山口典子、小山泰介、前田征紀、高木こずえ、福居伸宏)の作品が特別展示されていた。
展示の雰囲気はすっきりしていて悪くない。だが国内の主要ギャラリーのうち参加していないところも多く(たとえば、Taka Ishii Gallery、ギャラリー小柳、RAT HOLE GALLERY、フォト・ギャラリー・インターナショナルなど)、やや活気に欠ける。それでも、大阪のギャラリーのMEMのスペースに展示されていた、1930年代の関西前衛写真の主要な担い手のひとりであった椎原治のヴィンテージ・プリント、SCAI THE BATHHOUSEの斎木克裕や長島有里枝(水島の石油コンビナート!)の新作など、注目に値する作品に出会えたのは収穫だった。次回開催が可能なら、そこでどれだけのクオリティ、テンションを保てるかが勝負だろう。

2009/09/04(金)(飯沢耕太郎)

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