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artscapeレビュー

新建築臨時増刊『日本の建築空間』

2009年10月15日号

発行所:新建築社

発行日:2005年11月9日

新建築社の創刊80周年記念号。『建築20世紀 PART 1』『建築20世紀 PART 2』『現代建築の軌跡』と同じ新建築臨時増刊シリーズ。監修は、青木淳+後藤治+田中禎彦+西和夫+西沢大良。筆者が桑沢デザイン研究所にて今村創平氏とともに受け持つ授業にて、この大著を編集された橋本純氏に、毎年特別講義に来て頂いている関係で、よく読ませていただいている。アーカイブ的な本であるが、繰り返し取り上げる意義は大きいだろう。「日本の建築空間」というタイトルに、この本の核心が込められている。そもそも、寺社仏閣など古典的な日本建築と、西洋化以降の現代建築には大きな断絶があるように扱われており、ブルーノ・タウトが桂離宮にモダニズム的なものを発見するなど一部を除けば、両者を貫く視点はほとんどなかった。しかし本書は、その歴史上の断絶を接続しようとする。これが第一の核心である。第二の核心は、その断絶をつなぐ視点が「空間」であることである。西洋で建築学に「空間」という言葉が初めて学術的に取り入れたのは、19世紀末のA.シュマルゾーといわれる。つまり、建築における「空間」という概念は、比較的新しく、当然日本語ではもっと新しい。西和夫が巻頭で語るよう、日本建築はこれまで外観で語られることが多かった。しかし内部の「空間」に目を付けたときに、はじめて「日本の建築空間」が一貫した流れの中に存在していることが見えてくるだろう。なお、「日本『の』建築空間」というタイトルは、明らかに井上充夫の『日本建築の空間』(1969)を意識したものでもあろう。重点が「日本建築」よりも、「建築空間」そのものに移っているといえるのではないか。

2009/09/13(日)(松田達)

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