2022年10月01日号
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artscapeレビュー

SHOJI UEDA 1913-2000 写真家・植田正治の軌跡

2009年10月15日号

会期:2009/09/19~2009/11/30

植田正治写真美術館[鳥取県]

鳥取県西伯郡伯耆町の植田正治写真美術館に出かけてきた。カフェトークということで、ラウンジでコーヒーを飲みながら「植田正治とその時代」の話をするという、おしゃれなイベントに講師として招かれたのだ。植田正治美術館は1995年に開館。高松伸設計のコンクリート打ちっぱなしの建物は、植田の戦前の名作「少女四態」(1939)を象ったユニークな外観である。2000年の植田の歿後も、しっかりとした企画の展示を続けてがんばっている。ただ、交通の便があまりよいとはいえないので、集客には苦労しているようだ。名峰、大山の麓の素晴らしい環境なので、ぜひ一度といわず二度でも三度でも足を運んでほしい(12月、1月、2月は冬期休業)。
さて、今回の展示は2005~2008年にスペイン、スイス、フランスの6会場を巡回した展覧会がもとになっている。フランスの写真評論家、ガブリエル・ボーレが、1週間美術館の収蔵庫に通い詰めて選んだという作品は、初期から晩年に至る植田正治の作品世界をバランスよく概観することができる。特に、あまり注目されてこなかった1970~80年代の「風景の光景」シリーズや、最晩年の「黒い海」(1999)の連作など,植田の新たな側面にスポットを当てていて、なかなか興味深い展示だった。こうして見ると、植田の作品がいまヨーロッパの観客に、「植田調」(UEDA-CHO)と称されて驚きの目で迎えられている理由がわかるような気がする。そのどこかドライで、くっきりとしたフォルムを保った写真空間の構築は、まったく日本人離れしていて、フランスやイタリアの作家のようなのだ。鳥取県という「地方」で活動しながら、その視点は国際的に充分通用する高みに達していた。これは痛快な生き方だと思う。

2009/09/27(日)(飯沢耕太郎)

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