artscapeレビュー
山本兼一『火天の城』
2009年10月15日号
発行所:文藝春秋
発行日:2007年6月10日
9月に公開された同名映画の原作である。織田信長の安土城の建設をめぐって、大工棟梁の視点から描いた時代小説。父と息子の物語になっているところなどは、中世のヨーロッパを舞台にしたケン・フォレットの『大聖堂』をほうふつさせる。現存しないために、さまざまな復元案があるのだが、巨大な吹抜け案なども、コンペの対案として紹介しているのは興味深い。宣教師を経由したヨーロッパの影響なども示唆している。建築界では重源が好まれ、彼を主人公にした小説も書かれているが、なるほど、安土城はエキセントリックな施主との関係もあってエンターテイメント性が高い。なお、映画では息子の代わりに福田沙紀演じる娘が登場するなど、さまざまな変更があり、その比較も楽しめる。
2009/09/30(水)(五十嵐太郎)