2022年10月01日号
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artscapeレビュー

卒業設計日本一展2009

2009年10月15日号

会期:2009/09/12~2009/09/26

ギャラリー間[東京都]

「せんだいデザインリーグ 卒業設計日本一決定戦 2009」に出展された全国527作品のうち、ベスト5となった卒業設計作品が展示されていた(上階には別作品も)。審査の過程は、出展できなかった幻の作品「オノマトペ」(菊地尊也)[東北大学]の存在も含め、さまざまに話題になったので、ここで個々の作品評についての繰り返しはできるだけ避けたいが、いくつかのレポートと本展覧会を見て、本年度の審査の軸を二つあぶり出してみたい。ひとつは破壊力/完成度の軸(X)であり、もうひとつは私性/社会性(Y)の軸である。この二つの軸は、相関関係がないわけではなく、破壊力と私性は関連し(第I象限)、完成度と社会性(第III象限)は関連するはずである。そして、このいずれかの象限にあるものは一貫性のため最終的に評価が高まり、そうでない象限(第II象限、第IV象限)にあるものは結局作品としてのバランス感が保てず、特別賞に落ち着いたというのが、事後的に見た筆者の推測と仮説である。
日本一の『Re: edit... Characteristic Puzzle』(石黒卓)[北海道大学]は、完成度と社会性の高い第III象限(端)の作品である。原点からの距離に加え、バランス性が得点を加算した。日本二の『触れたい都市』(千葉美幸)[京都大学]は、破壊力と私性の高い第I象限(端)の作品。日本一となる可能性もあったであろうが、審査員のバランスによって、結果日本二となった。日本三の『THICKNESS WALL』(卯月裕貴)[東京理科大学]は、同じく破壊力と特に私性の高い第I象限(中上)の作品。千葉の作品と同じ象限だったため日本三に。ただし、ギャラ間での展示は、巨大模型が追加されていたようで、迫力があって個人的に好印象だった。特別賞の『下宿都市』(池田隆志)[京都大学]は、完成度にやや傾いた私性の高い第II象限(Y軸正付近)の作品。バランス上、特別賞に。実はこの作品で気になったのは、ローマ都市中心の十字路(カルドとデクマヌス)のように、縦横に横断する軸があったことで、そのことがやや古典的な感じを生んでいた。同じく特別賞の『キラキラ──わたしにとっての自然』(大野麻衣)[法政大学]は、一番微妙で、完成度と破壊力が同居し、私性をむしろ社会性に裏返したような印象の、あえていえば第IV象限(破壊力×社会性)の作品で、位置づけにくいけれども、そもそもこういう軸設定そのものを再考させるような作品のような気がした。難波氏と五十嵐氏が別の理由で同作品を押したというのも、こういうねじれた方向性を持っていたからかもしれない。なお、第II象限と第IV象限は、これから新しいタイプの作品を生み出す可能性があるのではと感じている。
分析図

2009/09/11(金)(松田達)

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