artscapeレビュー
2011年08月15日号のレビュー/プレビュー
瀧本幹也「LAND SPACE」
会期:2011/07/16~2011/08/28
MA2ギャラリー[東京都]
この7月に役割を終えたスペースシャトルの本体、セラミック素材に覆われたその表面、噴射口、噴煙に包まれた打ち上げ直後の姿などを撮っている。これは美しい。2階では打って変わって、黒く塗った壁に、コケのむした岩や雪がまだらに積もった山などを撮影したプリントを展示。地球の重力圏から逃れる装置の人工美と、地球表面を上から見下ろした自然美の対比ともいえるが、1階と2階とでは作者の熱量がずいぶん違うように感じる。
2011/07/28(木)(村田真)
ライアン・ガンダー「Meaning...surrounds me now」
会期:2011/07/10~2011/09/18
1223現代絵画[東京都]
長い壁に小さめの同型パネルがペアで20組、色分けされて並んでいる。なんだかわからないけどちょっといい。この感覚は大切だ。突き当たりの壁には色もサイズもプロポーションも異なる数十枚のパネルが立てかけられていて、もっといい感じ。だが、もう一方の壁には前回展示されていた三輪美津子の絵画を入れた大きな箱が立てかけられていて、なぜ次の展示が始まってるのに撤去しないのか、とても残念に思った……のもつかの間、まったく同じ箱が隣にあって、これも作品であることが判明。ライアン・ガンダー、いいねえ。入場料500円はけっして高くない(安くもないけどね)。
2011/07/28(木)(村田真)
AAPA東日本大震災復興支援・アートミーティング「第1回仙台セッション」
会期:2011/07/29
Ai_gallery[宮城県]
AAPA東日本大震災アートミーティング第一回仙台セッション「今、アートに何ができるか」が開催された。基調報告として、南條史生さんは311以降の森美術館のさまざまな対応、宮城教育大の村上タカシさんは3.11メモリアルプロジェクトなどのアート活動を紹介する。第一部「現場からの報告・提案」では、リアス・アーク美術館の山内宏泰さんが五感に訴えるアートの伝達力を強調した。続いて、えずこホールの水戸雅彦さんは4月12日にあえて公演を決行したこと、今こそアートが求められることを語る。そしてアーティストの遠藤一郎さんは「未来へ」号のクルマで東北各地をまわり、被災商店の看板ペイントや表札アートなどを行なう試み、森ビルの藤原純さんは県をまたぐ長大な津波浸水ラインに沿って、未来に記憶を残すパブリックアートを置いていくプロジェクトを提案する。第二部のパネルディスカッションでは、五十嵐が研究室の活動を紹介しつつ、建築界の状況をレビューしてから、全体でアートの役割について討議した。
2011/07/29(金)(五十嵐太郎)
タグチ・アートコレクション GLOBAL NEW ART
会期:2011/07/12~2011/08/31
損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]
価格が青天井の巨匠ウォーホルやリキテンスタインはさすがに版画だが、それ以降のキース・ヘリングや村上隆らネオポップの作品は1点ものが多い。なんか以前見たミスミアートコレクションに似てるなあと思ったら、同じコレクションだった(新しい作品がずいぶん増えているようだが)。事情は知らないが、ミスミという企業のコレクションから、その社長か会長であるタグチさんの個人コレクションに移行したらしい。いまさらウォーホルやリキテンスタインを集める必要はないし、ぜひこの若手開拓路線は守ってもらいたい。個人的には、工事現場の仮設壁にオスゲメオスが描いたグラフィティをひっぺがしてきた作品や、ガラクタの集積で人の顔をつくるヴィック・ムニーズの写真など、ストリート系の作品(どちらもブラジル!)が貴重だと思う。
2011/07/29(金)(村田真)
上野政彦──四つ月の物語
会期:2011/07/19~2011/07/31
ギャラリーはねうさぎ[京都府]
シリーズで開催されている4組のアーティストによる「月」をテーマにした展覧会。今回は上野政彦の写真作品や小さなオブジェが展示された。透き通るような薄い素材や繊細なその手仕事の、重力から解放されるような軽やかなイメージにうっとりと見入ってしまう。夜空や月の満ち欠け、時間の経過に思いが巡るミニマルな表現。暗くなってから見に行ったのは正解だった。
2011/07/29(金)(酒井千穂)