artscapeレビュー
2011年08月15日号のレビュー/プレビュー
中谷由紀──通りすがる
会期:2011/07/18~2011/07/31
STREET GALLERY[兵庫県]
Tシャツ生地に描かれたユーモラスなモチーフと染めもののような色彩の滲みがなんとも絶妙な味わいをもつ中谷由紀の絵画作品。今回は「盆栽」をテーマにしていた。滑稽でちょっと不気味なイメージの人物や植物のモチーフが、リズミカルな調子で配された画面はインパクトもすごい。暑かったけれど見に行くことができてよかった。
2011/07/23(土)(酒井千穂)
栗田咲子──養いもの浄土
会期:2011/07/02~2011/07/23
FUKUGAN GALLERY[大阪府]
描かれた動物たちは、とぼけた顔をしていたり、寝そべっている姿が気怠かったり、どれも緊張感の希薄なユルい空気に包まれている。ついニヤっとこちらの頬もゆるんでしまう栗田さんの作品。「いいなあ、部屋にあったら楽しいだろうなあ」と個展を訪れる度につぶやいてしまう。
2011/07/23(土)(酒井千穂)
大沼洋美「くもがうまれるところ」
会期:2011/07/21~2011/07/26
谷口雅企画の現代HEIGHTS Gallery DENの連続展示の第四弾。山形の東北芸術工科大学を卒業して当地で活動している大沼洋美の作品は、文字通り「くもがうまれるところ」を扱っている。山間で煙、霧、靄などが立ちのぼる場所を撮影しているのだが、大地から流れ出る気流のかたちに神経を集中している様子がしっかりと伝わってくるいい写真だった。地面に近い場面は床に近づけて、山頂のあたりの場面は天井近くに展示するというインスタレーションも、よく考えられていた。
それとは別に、同時に展示されていた「谷口雅写真展」の最終回「水面を眺めてばかりいる」もなかなかよかった。谷口の記憶のなかに流れ、淀み、渦巻き、変化していく「水面」のイメージを、ふと目にした嵐の後の川面や、バルコニーの床に叩きつける雨粒などと重ね合わせて撮影していったシリーズである。「句読点のように置かれた水の記憶。撮り損なってばかりいる水。あるいはだからこそいまだに水面を眺め続けシャッターをきりつづけているのだろう」。写真から言葉へ、そしてまた写真へと「切断し旋回」していく思考と感情の流れが、繊細かつ的確に定着されていると思う。
少し気になったのは、写真がA4のコピー用紙にプリントアウトされた状態で、上の二カ所だけをホッチキスで止めて壁に並んでいること。なるべく大げさになることを避けて、軽い感じで展示したいという気持ちはわからないではないが、逆に衒いが目につき過ぎる気もする。普通のプリント、普通のフレームでよかったのではないだろうか。
2011/07/24(日)(飯沢耕太郎)
ジャン=ルイ・トルナート「Between II, Bad Dreams」
会期:2011/07/18~2011/07/31
PLACE M[東京都]
ジャン=ルイ・トルナートは1969年生まれ。1996年にアルル国立写真大学を卒業し、現在はパリを中心に活動している。2009年12月にも、PLACE Mで赤外線フィルムを使用して睡眠中の男女を撮影した「Between」シリーズを発表しているが、本展はその続編にあたる。ベッドで眠っている人の姿を定点観測的に撮影するというコンセプトに変わりはないのだが、今回はそれに「波動や煙、液体、亡霊のような形といった抽象的で奇妙な風景の写真」が付け加えられている。そのことによって、眠りの世界で、人間がいわば「気体化」して、ふわふわと宙を漂っているような感覚が強調されているようだ。まさに現実と夢の「中間(Between)にいる経験」の見事な視覚化といえるだろう。
これはまったく偶然なのだが、今月、吉行耕平の「The Park」に続いて、赤外線フィルムを使った作品を見ることができたのが興味深かった。むろん、デジタル的な処理を施しても同じような視覚的効果は得られるかもしれないが、目に見えない赤外線を感知することができるこのフィルムに写し出された世界は、被写体そのものが内側から発光しているような奇妙な生気に満たされている。闇の世界に分け入る手段として、さらなる可能性を孕んだ手法といえるのではないだろうか。
なおPLACE Mの階下のM2ギャラリーでは、トルナートのもうひとつの作品「Burned Land」が展示されていた。山火事にあった森を撮影したカラー写真のシリーズである。飛行機の残骸らしき物体が点在する黙示録的な光景もまた、「中間にいる経験」の表象化といえそうだ。
2011/07/26(火)(飯沢耕太郎)
全国アート物産展!!
会期:2011/07/07~2011/07/31
ナディッフギャラリー[東京都]
island JAPANの七夕祭りだそうで、全国の若いアーティストたちが小品やアートグッズをところ狭しと展示販売している。遠藤一郎だとかオル太とか知ってる名前もあるが、多摩川カジュアル、ヌケメ、信長、星屑のキラメキっていったいだれ? つーかなに? まあ名前は許すにしても、なんでうんこ系ちんこ系が多いの? 困ったもんだ。人のことはいえないが。
2011/07/28(木)(村田真)