2020年10月15日号
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artscapeレビュー

2013年10月15日号のレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2013「フェスティバルFUKUSHIMA in AICH!」

会期:2013/09/07~2013/09/08

オアシス21[愛知県]

オアシス21で開催された大友良英によるフェスティバルFUKUSHIMA!のオープニングは、観衆にまぎれ、あちこちに散らばった老若男女、さまざまな楽器をもった人たちが、ルールに基づく、シンプルなリズムとメロディによって即興的なオーケストラを奏でる。梅田が振り付けた3人のダンスのように、ばらばらの個性を維持しながら、ひとつの音楽としてのうねりとエネルギーを発散する。最後の盆踊り大会は、それぞれに人の輪がまわる櫓が林立するなか、遠藤ミチロウが歌い、多くの地名を連呼したり、「ええじゃないか、ええじゃないか」とみなが合唱した。音楽の力で、おばあちゃんからパンクの兄ちゃんまで、さまざまな人が一緒に踊る風景は幸せな気分をもたらし、感動的である。大勢に混じって、梅田やアジアのダンサーも踊っていた。フェスティバル福島は、あいちトリエンナーレのテーマ「復活」にふさわしいイベントである。テーマに土建屋的な「復興」ではなく、精神的な「復活」の言葉を選んだのは、まさにこれだった。ちなみに、原発事故が大したことではないと言って、東京オリンピックが決まった日に、あいちでは福島を想う、福島発のイベントを開催することができて本当によかったと思う。

2013/09/08(日)(五十嵐太郎)

岡啓輔《蟻鱒鳶ル》

[東京都]

東京で久しぶりに岡啓輔と会い、彼がセルフビルドで建設している《蟻鱒鳶ル》の現場を見学した。70cmずつ段階的にコンクリートを打設し、すでに8年近くが経っている。ようやく地上2階まで完成し、あともうワンフロアだという。地下室も重機を使わず、ひとりで掘って施工した驚異的プロジェクトである。あちこちに身体性が刻まれた装飾とセルフビルドは、彼が関わってきた高山建築学校の精神と歴史が結晶化したものと言えるだろう。

2013/09/11(水)(五十嵐太郎)

少女と夏の終わり

会期:2013/09/21

ポレポレ東中野、名古屋シネマスコーレ[東京都、愛知県]

石山友美のデビュー作となる映画『少女と夏の終わり』を見る。テクノスケープや開発も入り込む山間部を舞台とする2人の少女が主人公だ。そして村人のコミュニケーションの潤滑油としての噂が物語をドライブさせる。対照的だが、仲よしの女子中学生が心と身体のズレから揺れ動き、ひとつの嘘が発せられたことを契機に、最後はそれぞれにとって意外な居場所を見つける。少女から女になっていく夏の終わりが、瑞々しく描かれる。

2013/09/12(木)(五十嵐太郎)

図書館戦争

映画『図書館戦争』(監督:佐藤信介、原作:有川浩)は、期待しなかった分、意外に楽しむことができた(これも意外とちゃんとしていた戦闘シーンは少し長過ぎか)。メディア良化法が施行され、図書館が表現の自由をめぐる戦場となったパラレル日本。荒唐無稽な設定かと思われたが、小説やアニメで以前に鑑賞したときに比べて、現実の日本は少しこの状態に近づいたかもしれない。ちなみに、磯崎新による北九州の図書館と美術館が主要な舞台に使われている。

2013/09/12(木)(五十嵐太郎)

黄金町バザール2013

会期:2013/09/14~2013/11/24

京急日ノ出町駅から黄金町駅間の高架下スタジオなど[神奈川県]

アジアを中心に内外16組のアーティストが参加。以前の作品も含めて20作家以上の作品が京急沿線の黄金町界隈に展開している。展示場所は元売春宿の小さな建物が多く、狭く込み入った空間をいかに生かすかが見どころのひとつだ。鎌田友介は天井をブチ抜いて細いL字鋼と角材を組み上げ、蛍光灯や都市の写真などを差し挟んだインスタレーションを発表。吹き抜けの空間全体が作品化されていた。台湾から来たタイ・ハン・ホンも建物全体をインスタレーションしたもので、1階も2階もドアを開けると金色の重石が上がり、奥の壁がギィーッと開く仕掛け。一種の「からくり屋敷」で、よくできている。一方、太田遼の部屋にはなにもないが、奥の狭い中庭を見ると周囲がトタン板で囲まれている。部屋に作品を置かず、中庭を「中部屋」に変えてしまったのだ。この3人は場所の読み方、空間の裏返し方がうまい。タイのトーラープ・ラープジャロエンスックは駐車場の壁にタブローや刺繍した布などを描き、本物のタブローも並べている。かたわらの記名ノートや寄付箱なども手描き。とにかく四角いものならなんでも絵にしてしまう。これは共感するなあ。緊急参加した韓国のユ・ソラは、身近な日用品の輪郭を刺繍する。刺繍は近年よく使われる手法だが、彼女は柔らかい表面に刺繍するためゆるやかな凹凸があり、古代のレリーフ絵画を思い出させる。さて、オープニングには市長以下、県警幹部や議員などエリャー人たちが集まり、乾杯前のあいさつだけで30分以上費やしていた。行政の並々ならぬ関心の高さがうかがえるが、そのわりに展覧会は話題になっていないなあ。彼らから見ればこれは展覧会というより、「環境浄化」という仕事なんだろう。

2013/09/13(金)(村田真)

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