2020年10月15日号
次回11月2日更新予定

artscapeレビュー

2013年10月15日号のレビュー/プレビュー

吉本伊織 展

会期:2013/09/13~2013/10/06

M・Zアーツ[神奈川県]

黄金町バザールに合わせた個展。日本画素材の風景画が並ぶ。基本的にモノクロなので冬の日本海とか雪景色が多い。いや、日本海側の風景や雪景色が多いからモノクロになったというべきか。いずれにせよ寒々とした「殺風景」が好きなようだ。絵の下にそれぞれ陶器が置いてあるが、これは吉本の作品ではなく画廊のコレクション。これが絵の引き立て役になっていて、いささかドーピングの疑いが。

2013/09/13(金)(村田真)

菊竹清訓《スカイハウス》(1958)、磯崎新《新宿ホワイトハウス》(1957)

[東京都新宿区]

朝から打ち合わせ。すぐ近くの菊竹清訓の《スカイハウス》を久しぶりに外から見たが、塀が高くなり、あまりよく見えない。続いて、新宿へ。前衛芸術家たちが出入した磯崎新の処女作、《ホワイハウス》がカフェにリノベーションされたので、昼食をとりつつ見学した。これもスカイハウスと同様、1950年代末の建築である。しかし、磯崎らしいというよりも、増沢洵の最小限住居の空間構成などと似ており、50年代のモダン住宅という感じだ。

写真:上=《スカイハウス》、下=《新宿ホワイトハウス》

2013/09/13(金)(五十嵐太郎)

児玉靖枝「深韻──水の系譜」

会期:2013/09/02~2013/09/14

Oギャラリーeyes[大阪府]

これまでにも発表されてきたシリーズ「深韻」の新作が展示された児玉靖枝の個展。油彩と木炭によるドローイングをあわせた10点が並んだ。霧が立ちこめる雑木林の光景を描いた《深韻──水の系譜(霧雨)》のシリーズの湿度感や空気の重量感、水面に映る木々のそこはかとない存在の描写にも魅了された。画面全体には、まさに靄や霧のように、グレーやブルーの色味を帯びた淡く鈍い色彩が広がっているのだが、幾重にも塗られた色の層が醸し出す空間的な奥行きが深く、神秘的でもあり、見ていると画面のなかへと誘い込まれていく。日常で目にする光景に目には見えない気配をふと感じたときの感覚、その感動を丁寧に表現しようとする作家の真摯な制作時間にも思いが巡る、味わい深い個展だった。

2013/09/14(土)(酒井千穂)

筧有子「compendium of seasonal words」

会期:2013/09/06~2013/09/16

GALLERY 301[兵庫県]

日本画の技法を用いた作品を発表している筧有子の個展。今展では、雲肌麻紙などの和紙に水干絵の具、顔彩で風景や草花などを描いた作品が十数点発表された。壁面のみならず、床面にも紙の作品が絵巻物を広げるように展示されていたのだが、それがユニーク。よく見ると、作品は2枚重ねられていて、上の作品と下の作品で物語のように風景が繋がっている。少しだけ下の絵の色やモチーフが透けて見えるのも密やかだがきっと作家の意図だったのだろう。リズミックなモチーフの配置とその軽やかなイメージ、絵の具の淡い滲みやその重なりの透明感も美しかった。

2013/09/14(土)(酒井千穂)

第98回二科展

会期:2013/09/04~2013/09/16

国立新美術館[東京都]

文展から二科が独立して早98年。絵画だけで千人以上の作品が並ぶ。2点出してる人もいるので、点数でいうと1,200点はあったか。それを約1時間で制覇。1点に3秒もかけてしまった。さすが「二科」だけあって日展より新しもの好きが多いせいか、彫刻も含めて抽象が多い。でも完全抽象は数点しかなく、たいてい具象形態の名残があったり奥行きや立体感があったり、ハンパ感は否めない。このハンパ加減はサービス精神の表われなのかも。何点か目に止まった作品もあった。高藤博行は縦長の画面の枠を強調するように窓枠を描き、その内側に庭の植栽と自分の姿も含めてガラスに映った室内風景をダブらせて描いている。絵画意識の高い絵画である。奥田明宏の作品は、ルーベンスの《レウキッポスの娘たちの略奪》をピカソ風に再解釈したもの。名画の引用はたまに見かけるが、これはしっかり再構築している。田辺美穂子は、塗り重ねた画面の上に黒い線描でクマのぬいぐるみや卓上の小物をザックリ描いていて、もっとも「現代」的。珍しく額縁もつけず、今回見たなかではいちばんモダンな絵画といえる。さて、二科展も再来年に創設1世紀を迎えるため、今回は同会と関係の深かった岡本太郎のコーナーを設けていた。のだが、展示は油絵の複製や「太陽の塔」の写真パネルのみ。ショボイぞ。

2013/09/14(土)(村田真)

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