角田奈々「苦いマンゴー~ベトナムの風に吹かれて~」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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角田奈々「苦いマンゴー~ベトナムの風に吹かれて~」

2014年10月15日号

会期:2014/09/01~2014/09/21

photographers' gallery[東京都]

角田奈々は2010年頃からベトナム各地を旅して写真を撮影しはじめた。その中で、ポートレートの撮影の仕方に一つのスタイルを作り上げていった。被写体を画面のちょうど真ん中に置き、周囲の環境との関係に細やかに気配りしつつシャッターを切る。選ばれている人物は老若男女さまざまであり、部屋の中もあれば、野外の場合もある。被写体との距離感も微妙に違っていて、全身像も、クローズアップに近い写真もある。なぜ彼らが真ん中にいるのか、その理由ははっきりとはわからないが、そこに彼女の確かな意志が働いていることは間違いないだろう。まっすぐに、正面からベトナムの人たちと向き合いたいという強い気持ちが、支えになっているのではないかとも想像できる。
角田は九州産業大学写真学科の出身で、2006年から福岡のAsian Photographers Gallery(APG)のメンバーとして活動した。ギャラリーは2011年に閉廊になるが、彼女はアジア各国に向けて開かれたギャラリーの活動を、「個人的に」引き継ごうと考えている。ベトナムで撮影を続けているのもその一環だし、今回の展示にあわせて「APG通信」というポストカードサイズの定期刊行物も発行しはじめた。写真の裏面に、ベトナムでのさまざまな出会いについて書かれた短いエッセイが掲載されている。その実感がこもった文章がなかなかいい。今回の展示は、24枚の写真が壁から手前に張り出した台に並べられていて(他に大きく伸ばしたプリントが壁に1枚)、テキストは一切ない。今後は、もう少し、言葉と写真の融合の形も模索していっていいのではないだろうか。

2014/09/21(日)(飯沢耕太郎)

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