2018年06月15日号
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artscapeレビュー

ヴェネツィア散策

2014年10月15日号

パラッツォ・ドゥカーレほか[イタリア、ヴェネツィア]

《パラッツォ・ドゥカーレ》(814、改修1340~1419)へ。ちゃんと入るのは、20年ぶりくらいだろうか。中庭から全体を見渡すと、きわめて複雑であり、一人のデザインでは達成しえない、様式の非統一ぶりが興味深い。各部屋はティントレット、ベリーニ、ヴェロネーゼの作品を含む絵画が、壁から天井までを覆いつくす。余白を良しとする日本的な空間のあり方とは対照的な美意識だ。が、そうした絵は壁の窓であり、天窓でもある。


《パラッツォ・ドゥカーレ》(記事左上の写真も)

カルロ・スカルパが手がけた《クエリーニ・スタンパリア財団》(改修1959~1963)へ。これも学生のとき以来だろうか。心憎い素材と細部のデザインだが、写真で撮影しようとすると、再現が結構難しい。マリオ・ボッタほか、後世の建築家による改修デザインも興味深い。上部の美術館エリアは、ヴェネツィアならではの不整形の部屋が、バロックやロココ風になっていた。
マッジョーレ島にて、ビエンナーレにあわせ、杉本博司が制作したガラスの茶室《Glass Tea House Mondrian/聞鳥庵(モンドリアン)》を訪れた。ガラス工芸美術館のプロジェクトで、水に浮かぶガラス張りの茶室である。現代性と和のテイスト。とてもセンスがいい、キッチュというべき作品だった。


杉本博司《Glass Tea House Mondrian/聞鳥庵(モンドリアン)》

レンゾ・ピアノによる《フォンダツィオーネ・ ヴェドヴァ》(2009)へ。塩の倉庫をエミリオ・ヴェドヴァの個人美術館に改造したものである。一定時間ごとに、収蔵庫から抽象表現主義風の絵画が移動し、フォーメーションを組み、また元に戻る機械仕掛けが見世物だ。メカが面白く、工場のオートメーションを美術化したものと言える。


左:《クエリーニ・スタンパリア財団》
右:《フォンダツィオーネ・ヴェドヴァ》

6年ぶりくらいのペギー・グッゲンハイム・コレクション(1980年開館)へ。戦時下も毎日のように作品を購入して成立した奇蹟的な同時代美術館である。個人コレクターの強みを生かし、迅速に入手し、その作家らしからぬ珍しい作品もちらほら見受けられる。とくに有名なのは、ジャクソン・ポロックの支援だが、日本で開催された大型の回顧展にも来なかった作品群が海辺の部屋に展示されている。

2014/09/17(水)(五十嵐太郎)

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