2018年01月15日号
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artscapeレビュー

乃村拓郎「On」

2016年01月15日号

会期:2015/11/13~2016/12/27

the three konohana[大阪府]

「日本における彫刻」について考えることを制作の出発点に据えている乃村拓郎。本個展では、近代における「彫刻」の輸入・制度化から排除された存在、例えば「人為を加えない、ありのままの自然美の提示」「自然の造形の見立て」といった態度や、器などの「工芸」を作品内に取り込むことから出発している。
乃村は今回、三つの手法で展開した。(1)材木の端材や流木を展示台や床に置き、木目のねじれが描く曲線やウロ、絡み合う根っこといった自然のままの造形を「美」として捉えてみること。(2)同じく拾ってきただけの石を台に載せ、複雑な起伏をもつ表面の陰影や微妙な色彩のグラデーションを鑑賞すること。ただし、この「石」バージョンには、高精細なデジタルプリントの写真が傍らに添えられている。(3)小さな壺や桐箱のかたちに彫られた木彫。
ここで乃村は、とりわけ(2)と(3)において、「自然美そのままの提示」「工芸」から出発しつつ、相殺するような操作を加え、ネガとして反転させている。(2)では、均一にピントが合わされ、デジタル合成によって肉眼視を超える高精細な写真プリントがワンセットで置かれ、目の前にある実物の「石」を凌駕するリアルな質感をもつ画像が提示されることで、「拾ってきただけの石」が、本物そっくりに精巧に彫られ彩色された「つくりもの」、すなわち人工物であるかのように見えてくる。また、壺や桐箱のかたちに成形された(3)は、滑らかに磨かれた表面、彩色、掌に収まる大きさもあいまって、「工芸」的な見た目をしているが、蓋は開かず、「用途」や「機能」が剥ぎ取られている。従って乃村の試みは、「自然美そのままの提示」「工芸」を相殺・反転させるような介入を行なうことで、西洋の概念・制度としての「彫刻」ではなく、「非 自然美の提示」「非 工芸」という、一度否定されたものの否定形から始まる「もうひとつの彫刻」の可能性を模索していると言えるだろう。それはまた、私たちがものを認識するときの、見た目のイメージと実体の同一性や遊離をめぐっての思索でもある。

2015/12/26(土)(高嶋慈)

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