artscapeレビュー
カンコウツウコウ展─秋の会合─
2016年10月15日号
会期:2016/09/06~2016/09/11
SARP[宮城県]
毎年、秋にSARP(仙台アーティストランプレイス)を会場に開催されている「仙台写真月間」。今年は山田静子、小野寺香那恵、カンコウツウコウ「(阿部明子+榎本千賀子)、花輪奈穂、酒井佑、小岩勉、野寺亜季子が参加したが、そのうちカンコウツウコウの展示を見ることができた。
カンコウツウコウは、阿部明子(1984- 宮城県生まれ)と榎本千賀子(1981- 埼玉県生まれ)が今年結成したばかりの写真制作ユニットである。今年になって、阿部は仙台から宮城県小牛田に、榎本は新潟から福島県金山町に住まいを変えた。その「新生活を報告しつつ、共同制作の可能性」を探るというのが本展の企画意図で、SARPの2つのスペースでは、それぞれの新作の展示のほか、ある1枚の写真を起点にして、阿部が榎本の、榎本が阿部の写真を選んで交互に並べるなど、2人の写真を交差・浸透させる試みが展開されていた。阿部の新作は、自宅の庭を撮影した複数の画像を大きく出力して、微妙にずらしたり重ね合わせたりする作品であり、榎本は日々の暮らしを記録した断片的な写真群に、メッセージを記した手紙を添えている。それらのメイン展示を中心に、2人の写真が触手を伸ばすように絡み合って、洗練されたインスタレーションが成立していた。
阿部と榎本は、写真による風景表現の可能性を模索して2013年から毎年開催されているグループ展「リフレクション」(ディレクション/湊雅博)のメンバーでもある。個の表現と共同性とをどのように両立させていくのかは大きな課題だが、このユニットの活動は今後も充分期待できそうだ。
2016/09/11(日)(飯沢耕太郎)