artscapeレビュー
塩田千春「鍵のかかった部屋」
2016年10月15日号
会期:2016/09/14~2016/10/10
KAAT神奈川芸術劇場[神奈川県]
昨年のヴェネツィア・ビエンナーレ日本館に出品した塩田千春の帰国記念展。なんですぐ近くの神奈川県民ギャラリーを使わず、わざわざKAAT(神奈川芸術劇場)のスタジオでやるのかよくわからないが、一説によればキュレーターの中野仁詞氏がKAATの担当になったからだという。そもそも中野氏が県民ギャラリー時代に塩田千春の個展を開き、高く評価されたことがヴェネツィアにつながったとすれば、同じギャラリーでやることもないかと勝手に納得。さて、スタジオに入ると、黒い部屋のなかに赤い毛糸が張り巡らされ、5つの古びたドアが円状に設置されている。その奥には赤い毛糸から無数の古い鍵がぶら下がっている。ヴェネツィアに展示された船はない。毛糸は一巻き75メートルのものを3千個、総延長200キロ以上使ったという。これはKAATからいわき市までの距離に匹敵するらしい。また、鍵は世界中から提供されたうちの1万5千個をぶら下げたという。すごい量だが、糸は細いし鍵は小さいから圧倒感はない。もともと塩田の作品はドラマチックな上、今回は会場が演劇用のスタジオで照明も劇場用のせいか、いつにも増して演劇的に感じるなあ。
2016/09/18(日)(村田真)