artscapeレビュー

横浪修「Assembly & Assembly Snow」

2016年10月15日号

会期:2016/09/02~2016/10/08

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

2010年頃から開始された横浪修の「Assembly」は、5~9人くらいの少女たちの集団を、やや距離を置いて撮影したシリーズである。彼女たちは、全員同じ服装をしており、輪をつくったり、整列したり、行進したりしている。遠いので顔はほぼ見えず、共通の儀式めいたポーズをとっていることもあって、どこか謎めいた印象を与える、個ではなく、集団としてのありように観客の注意を向けようとする、かなり珍しい種類のポートレート作品といえるだろう。
今回のEMON PHOTO GALLERYでの個展では、それに加えて新作の「Assembly Snow」のシリーズが展示されていた。前作が「個々の集まりを俯瞰することで、集合としての強さ」を引き出すことを目指していたのに対して、新作では「個々が重なり、溶け合う事でひとつになる」ことに集中している。少女たちをモデルにしている点では同じだが、雪や氷の上でポーズをとる少女たちが、スローシャッターでブレて写っていることで、より抽象的な色の塊のように見えてくる。伸び縮みする有機的なフォルムと化した少女たちの姿は、「Assembly」シリーズが新たな段階に入ったことを示していた。
とはいえ、このシリーズは、いまのところはセンスのいい「カワイイ」イメージの集合体に留まっている。「Assembly」の表現には、それ以外の、より不気味でビザールな要素を取り入れることもできそうな気がするが、どうだろうか。例えば制服姿の女子高生7人が、川の中で輪になって手をつないでいる作品(「No. M_1」2015)などに、その片鱗が見えるのではないかと思う。

2016/09/21(水)(飯沢耕太郎)

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