artscapeレビュー
驚きの明治工藝
2016年10月15日号
会期:2016/09/07~2016/10/30
東京藝術大学大学美術館[東京都]
最近、超絶技巧の明治工芸が人気を集めている。理由は一目瞭然、驚くほど緻密でリアルだからだ。例えば宮本理三郎の《葉上蛙》は、文字どおり葉の上に止まったカエルの彫刻だが、これがひとつの木から彫り出されていることに舌を巻く。《竹塗水指》はどう見ても竹筒を利用した器だが、じつは木で彫られているとかね。「自在置物」と呼ばれる金属彫刻はもっとすごい。エビや魚や昆虫が本物そっくりにつくられているが、それだけでなく鱗や節を結節点にリアルに動くのだ(もちろん展示物は動かせないが)。でもこれらはあまりに本物そっくりで、あまりに楽しすぎるので芸術としての評価は低く、「置物」どまりだったのだ。その評価が変わったのは、「芸術」の価値観そのものがひっくり返った最近のことでしょうか。驚くのはこれらのコレクションがひとりの台湾人、宋培安がここ20数年のあいだに集めたものだということ。ってことは、つい最近までそれほど高くない値段で市場に出回っていたということだ。それも驚き。
2016/09/06(火)(村田真)