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ルーヴル美術館特別展 ルーヴルNo.9 漫画、9番目の芸術

2016年10月15日号

会期:2016/07/22~2016/09/25

森アーツセンターギャラリー[東京都]

フランスの漫画はバンド・デシネ(BD)と呼ばれ、「第9の芸術」ともてはやされている。そもそもバンド・デシネは日本の漫画のように量産されたり、週単位で雑誌に掲載されたりするものではなく、初めから単行本として描き下ろされる場合が多い。紙質もよく、フルカラー印刷なので値段も高いため、子どもが読み捨てるものではない。と解説に書いてあった。なるほど、だから「芸術」なのね。そこでルーヴル美術館もバンド・デシネに目をつけ、ルーヴルをテーマに自由に描いてもらうという「ルーヴル美術館BDプロジェクト」を企画したってわけ。展示されているのは、日本人を含めた16人の漫画家。でも漫画の原画って小さいうえに枚数が多いから、美術館での展示には向いていないんだよね。だからここでは一部しか見せておらず、ストーリーを追っていくと不満が残る。逆にストーリーを追う必要がなく、1枚でも見るに耐える作品もある。ダヴィッド・プリュドムの「ルーヴル横断」がいい例だ。いちおうストーリーはあるらしいが、ルーヴルの所蔵作品と観客をおもしろおかしく対比させたり、額縁とコマ割りを巧妙にダブらせたり、1枚ごとに堪能できる。エンキ・ビラルの「ルーヴルの亡霊」は1枚1コマで、作品の写真や館内の展示風景に亡霊の絵を重ねたもの。こういう実験的な試みは日本人には少ない。日本人は谷口ジロー、荒木飛呂彦、松本大洋、五十嵐大介、寺田克也、ヤマザキマリ、坂本眞一が出しているが、ほとんどストーリー中心で、絵だけで見られるのは寺田くらい。漫画文化の違いですね。

2016/09/18(日)(村田真)

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