artscapeレビュー

津田直「IHEYA・IZENA」

2016年10月15日号

会期:2016/08/19~2016/09/17

POST[東京都]

津田直が辺境の地の人々の暮らしや儀礼を「フィールドワーク」として撮影するシリーズも、「SAMELAND」(2014)、「NAGA」(2015)に続いて「IHEYA・IZENA」で3作目になる。そのたびに、東京・恵比寿のPOSTで写真展が開催され、同名の写真集(デザイン・田中義久)が刊行されてきた。
今回、津田が撮影したのは沖縄本島北西部に位置する伊平屋島と伊是名島。2012年から福岡に住むようになったのをきっかけにして、沖縄を訪ねる機会が増え、本シリーズが少しずつかたちをとっていったという。北欧の住人たちを撮影した「SAMELAND」や、ミャンマー奥地のナガ族を取材した「NAGA」は、それほど長くない旅の時間から産み落とされてきたシリーズだが、「IHEYA・IZENA」は何度も島を訪れ、じっくりと熟成させていったものだ。その分、写真の構成に厚みが増し、信仰と深く結びついた住人たちの暮らしの細部が、鮮やかに浮かび上がってきた。「三部作」の掉尾を飾るのにふさわしい充実した写真群といえる。
津田の「フィールドワークシリーズ」は、これで一応完結ということだが、世界中に足跡を記す彼の写真家としての旅は、これから先もずっと続いていくのだろう。だが、そろそろ彼の世界観、写真観をもっと強く打ち出していかなければならない時期に来ているのではないかと思う。これまでの彼の写真シリーズは、それぞれの旅の目的地ごとにまとめられることが多かった。断片的に情報を提示していくのではなく、それらを統合する思考と実践の軸が必要になってきている。かつて『SMOKE LINE』(赤々舎、2008)で試みたような、いくつかの場所をつないでいく、より大きな視点の取り方が求められているのではないだろうか。

2016/09/14(水)(飯沢耕太郎)

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